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原子力発電所から発生する分
原子力発電所からは、気体状、液体状、固体状の放射性廃棄物が発生します。建物の換気をした空気などの気体は、フィルターなどを通して放射性物質をできるだけ取り除きます。その後、放射性物質の濃度を測定し、基準以下であることを確認して大気中へ放出されます。
洗濯の廃液など液体状のものは、ろ過や蒸発濃縮などをしたうえで、蒸留水は再利用するか、放射性物質の濃度を測定し、安全を確認して海へ放出されます。
液体状の廃棄物を蒸発濃縮した後に残った廃液は、セメントやアスファルトで固め、ドラム缶に詰められます。
そして、紙や布などは、焼却、圧縮などをしてから、使用済みのフィルターやイオン交換樹脂などは、貯蔵タンクで放射能レベルを下げてからドラム缶に詰められます。
制御棒や炉内構造物などの放射化した金属は、切断などをしたうえで容器に固化されます。
原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルに応じて以下の三つに分けられます。
- ・放射能レベルの極めて低い廃棄物:コンクリートや金属
- ・放射能レベルの比較的低い廃棄物:濃縮廃液、紙、布、イオン交換樹脂など
- ・放射能レベルの比較的高い廃棄物:制御棒、炉内構造物など
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原子力施設から発生する分
原子力発電所以外の原子力施設からは、「ウラン廃棄物」や「長半減期低熱放射性廃棄物(TRU廃棄物、Trans Uranic Waste)」とよばれる低レベル放射性廃棄物が発生します。
ウラン廃棄物は、ウラン濃縮施設やウラン燃料の加工施設で発生する沈殿物や使用済フィルターなど、ウランを含んだ廃棄物です。
TRU廃棄物は、再処理工場やMOX燃料の加工施設から出る廃液や使用済燃料の燃料を包んでいる被覆管を切断したものなど、半減期の長い超ウラン核種を含む廃棄物です。
現在、ウラン廃棄物は、ウラン燃料成型加工事業者や国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)、日本原燃(株)(JNFL)で保管されています。TRU廃棄物は、JAEAとJNFLで保管されています。
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研究施設などから発生する分
JAEAを含む全国各地の数多くの研究機関、大学、民間企業、医療機関などでは、研究用原子炉や核燃料物質、放射性同位元素などの使用にともない低レベル放射性廃棄物が発生します。現在、それぞれの発生者の事業所において保管管理されています。
研究施設などから発生する放射性廃棄物は、2008年6月にJAEAが埋設処分の実施主体として位置づけられ、国の定めた「埋設処分業務の実施に関する基本方針」(2008年12月)に即して策定された「埋設処分業務の実施に関する計画」(2009年11月認可)に基づいて事業が実施されます。第一期埋設事業における埋設施設の規模は、200リットルドラム缶換算で廃棄体約75万本(ピット処分約22万本、トレンチ処分約53万本)相当が計画されています。また、埋設施設の能力は、全操業期間の年間平均でピット処分約4,000本、トレンチ処分約11,000本の埋設処分を可能とする計画です。
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低レベル放射性廃棄物の処分
原子力発電所や原子力施設、研究施設などから発生する低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルなどに応じて埋設処分されます。放射能レベルの高い順に、L1、L2、L3とよばれています。
【トレンチ処分】
放射能レベルの極めて低い廃棄物(L3)は、地面の浅いところに埋設処分されます。これをトレンチ処分といいます。
JAEAの動力試験炉(JPDR)の解体にともなって発生したコンクリートなどの廃棄物を対象に、同研究所の敷地内で試験的に実施されています。また、日本原子力発電(株)では、東海発電所の解体にともなって発生する低レベル放射性廃棄物のうち、放射能レベルの極めて低いものの埋設施設の設置に係る埋設事業許可申請書を2015年7月16日に原子力規制委員会へ提出し、審査を受けています。
【ピット処分】
放射能レベルの比較的低い廃棄物(L2)は、浅い地面の中にコンクリートの囲い(コンクリートピット)などの人工的な構造物を設けて埋設処分されます。これをピット処分といいます。JNFLの低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)で行われています。
1号廃棄物埋設地では、各発電所で発生した濃縮廃液や使用済樹脂、焼却灰などをセメントなどで固めてドラム缶に入れたものを対象に、1992年12月から受け入れが開始されています。2号廃棄物埋設地では、金属やプラスチック類などをドラム缶に入れて、モルタルで固めたものを対象に、2000年10月から受け入れが開始されています。2023年10月末現在、1号廃棄物埋設地に15万387本、2号廃棄物埋設地に19万7,472本が埋設されています。
各発電所が希望する本数の受け入れを継続すると数年以内に満杯になる見込みのため、3号埋設施設の増設を予定しています。
低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)
写真提供:日本原燃(株)
【中深度処分】
放射能レベルの比較的高い廃棄物(L1)は、地下鉄やビルの建設などで一般的と考えられる地下利用に対して、十分余裕をもった深度(70m以深)への埋設処分が検討されています。これを中深度処分といいます。
■放射性固体廃棄物の種類と処分方法
※1 原子番号が、ウラン(92)よりも大きい核種のこと。ネプツニウム(Np)、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)などがあります。天然には存在せず、原子炉や加速器の利用により人工的に作られたもので、半減期が数万年以上と長いものもあります。
※2 クリアランス対象物。安全上「放射性廃棄物として扱う必要がないもの」を再利用したり、処分したりすることができる制度を「クリアランス制度」といいます。
出典:電気事業連合会資料より作成
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