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汚染水対策の状況
山側から海側へ流れている地下水や破損した建屋から流入する雨水などが原子炉建屋へ流れ込んでいます。その流入した水が燃料デブリに接触し建屋内に溜まっている高濃度の放射性物質を含む水と混ざることで汚染水が新たに発生しています。
汚染水対策は、汚染源を「取り除く」、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」という三つの基本方針に沿って、地下水を安定的に制御するための重層的な対策が進められています。
■汚染水対策の三つの基本方針と効果
資料提供:東京電力ホールディングス(株)
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汚染水の浄化処理
汚染水に含まれる放射性物質によるリスクを低減させるため、浄化処理を行っています。まず、セシウム吸着装置で汚染水に含まれる放射性物質の大部分を占めるセシウムを取り除きます。次に、淡水化装置で塩分を分離させます。この塩分を分離した淡水側の水は、燃料デブリを冷やす水として原子炉内に注水し再利用しています。一方、淡水化装置で分離した塩水側の水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理することによって、トリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いています。
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タンクへの貯蔵の状況
2023年11月23日現在、敷地内には1,046基のタンクが設置され、約133万トンの水が保管されています。タンクには、セシウムを取り除いた水(ストロンチウム処理水)と多核種除去設備で処理した水(ALPS処理水等)が保管されていますが、ALPS処理水等が全体の99%を占めています。
事故から2年後頃までは、ALPSの設備導入を検討している段階であったため、セシウム以外の放射性物質が除去できていない高濃度汚染水があり、その時期はタンクに貯蔵する際の放射性物質の濃度の基準を下回ることを優先していたため、環境へ処分するための基準を満たしていない処理途上水もタンクに貯蔵されています。これらは、処分するための基準が満たされるまで浄化処理されますが、その間タンクに貯蔵されています(保管中の水の約7割)。
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ALPS処理水の処分方法
タンクに保管しているALPS処理水については、2021年4月に政府により決定された「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、環境へ放出する場合は、トリチウム以外の放射性物質が安全に関する国の規制基準(告示濃度比総和1未満)を満たすまで、多核種除去設備などで浄化処理し、放出の際は、取水した海水と混合し、十分に希釈し、安全性を確認しながら海洋に放出するとしています。
2023年7月5日に、国際原子力機関(IAEA)がALPS処理水を海洋放出する計画に関し、「東京電力ホールディングス(株)の海洋放出計画は国際的な安全基準に合致し、海洋放出で放射線が人や環境に与える影響は無視できるほどごくわずか」と評価する包括報告書を提出しました。2023年8月22日に、関係閣僚等会議を開催し、政府として、ALPS処理水の処分が完了するまで、全責任を持って対応することを、総理を含めた全閣僚で確認したうえで、海洋放出を8月24日から開始することが決定され、同日、第1回目放出が開始されました。
放出後、放射性物質の拡散・移行状況を確認するため、海水、魚類、海藻類のモニタリングが、東京電力のみならず、関係省庁や自治体で行われていますが、海域モニタリング結果に有意な変動は確認されていません。分析結果は「包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)」にて公開データを順次拡充し、多言語で公開されています。
■ALPS処理水の海洋放出の設備の全体像
①測定・確認用設備
ALPS処理水に含まれるトリチウム、62核種、炭素14を希釈放出前に測定(第三者機関による測定を含む)し、62核種および炭素14が環境への放出に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化されていることを確認する。
②希釈設備
海水希釈後のトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットル※未満となるよう、100倍以上の海水で十分に希釈する。なお、年間トリチウム放出量は22兆ベクレル※を下回る水準とする。
- ・海水希釈後のトリチウム濃度は、ALPS処理水の流量と希釈する海水の流量をリアルタイムに監視し、両方の割合で希釈後の水が1,500ベクレル/リットルを下回ることを確認する。
- ・海水希釈後のALPS処理水について、放出中毎日サンプリングし、そのトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットルを確実に下回っていることを確認し、速やかに公表する。
- ・当面の間は海洋放出前の混合・希釈の状況で放水立杭を活用して直接確認した後、放出を開始する。
※告示濃度限度(60,000ベクレル/リットル)の40分の1であり、WHO飲料水基準(10,000ベクレル/リットル)の7分の1程度
③取水・放水設備
取水設備については、港湾内の放射性物質の影響を避けるため、港湾外からの取水とする。放水設備については、放出した水が取水した海水に再循環することを抑制するため海底トンネル(約1km)を経由して放出する。
④異常時の措置
希釈用の海水ポンプが停止した場合は、緊急遮断弁を速やかに閉じて放出を停止する。また、海域モニタリングで異常値が確認された場合も、一旦放出を停止する。
- ・緊急遮断弁は、津波対策の観点から防潮堤内に1台、放出量最小化の観点から希釈海水と混合する手前に1台、計2台を設置し、多重性を備える。
資料提供:東京電力ホールディングス(株)