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高レベル放射性廃棄物の処分
再処理工場では、原子力発電所の使用済燃料から再利用できるウランやプルトニウムを回収した後に、核分裂生成物を主成分とする放射能レベルの高い廃液が残ります。
この廃液は、高温で融かしたガラス原料とともにステンレス鋼製容器(キャニスタ)に入れ、冷やして固め、ガラス固化体とされます。これが、高レベル放射性廃棄物です。
日本では、ガラス固化体を30〜50年程度、一時貯蔵して冷却した後、最終的に地下300mより深い安定した地層中に処分することを基本方針としています。高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが十分低くなるまで、数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があり、その最も確実な方法として地層処分が採用されました。
ガラスは水に溶けにくく、化学的に安定しているため、長期間にわたって放射性物質を閉じ込めるのに優れています。地下深い層は、石油や石炭、鉄などの鉱床が何百万年、何千万年にわたって安定した状態で保存されてきました。また、酸素濃度が低く、地下水の動きもゆっくりしているため、金属の腐食はほとんど進行しません。こうした安定した岩盤などの「天然バリア」と、厚い金属製容器や緩衝材(粘土)といった「人工バリア」を組み合わせた「多重バリア」を構築して、安全に処分をすることとしています。
ガラス固化体は製造後、1,000年間で放射能が99.9%以上減少し、数万年後には、そのもとになった燃料の製造に必要な量のウラン鉱石(ガラス固化体1本あたり約600トン)の放射能と同程度になります。
国際原子力機関(IAEA)が策定した「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」では、放射性廃棄物は発生した国で処分するべきと示されており、各国とも自国で発生した放射性廃棄物は自国内で処分することが原則となっています。日本も2003年11月に、この国際条約を批准し、国内で処分することを前提とした「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を制定しています。
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関連情報(詳細):電気事業連合会
「高レベル放射性廃棄物の
バリアシステム」
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高レベル放射性廃棄物の管理状況
2023年3月末時点のガラス固化体貯蔵量に、それまでに発生している原子力発電の使用済燃料をガラス固化体に換算した量を加えると、約2万7,000本相当となります。
1995年に事業を開始した日本原燃(株)(JNFL)の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ヶ所村)の貯蔵容量は、ガラス固体化2,880本です。日本原燃(株)再処理工場での発生分と、これまで再処理を委託してきたフランスやイギリスからの返還分が貯蔵・管理されています。
さらに、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の再処理廃止措置技術開発センター(茨城県東海村)で、ガラス固化体が貯蔵・管理されています。
将来発生する量を勘案して4万本以上のガラス固化体を埋設できる施設が計画されています。
〈2023年3月末時点の管理状況〉JNFL2,176本(再処理工場分346本、返還分1,830本)、JAEA354本
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関連情報(詳細):電気事業連合会
「ガラス固化体ってどうやって貯蔵されているの?」
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科学的特性マップの提示
火山や活断層、地下深部の地盤の強度、地温の状況など、地層処分に関する地域の科学的特性について、既存の全国データをもとに一定の要件・基準に従って客観的に全国地図を4色に色分けした「科学的特性マップ」が2017年7月に提示されました。
科学的特性マップを提示することで、全国各地の科学的特性が分かりやすく示されましたが、これはあくまでも科学的な情報を客観的に提供するものです。
処分場所を選定するまでには、科学的特性マップに含まれていない要素も含めて、「文献調査」やボーリングなどによる「概要調査」、地下施設での「精密調査」がおよそ20年をかけて段階的に実施されます。今回の科学的特性マップでは、これまでに確認されている一定規模以上の約600の活断層を反映していますが、現時点では確認されていない活断層が存在する可能性やその影響なども詳しく調査・評価されることになります。
■科学的特性マップ
※グリーンの地域であっても、個々の地点が地層処分に必要な条件を満たすかどうかは、段階的な処分地選定調査を綿密に実施し、確かめる必要があります。
出典:資源エネルギー庁資料、原子力発電環境整備機構資料より作成
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文献調査の位置づけ
「科学的特性マップ」の提示後、原子力発電環境整備機構(NUMO)と国によって最終処分の必要性やその選定プロセスなどへの理解を深めていくための取り組みや情報提供が進められています。
最終処分事業について関心を示す市町村があれば、市町村の住民が地層処分事業についての議論を進めるための資料として役立てられるよう、全国規模の文献やデータに加えて、より地域に即した地域固有の文献やデータが調査・分析されたうえで提供されます。これが「文献調査」とよばれています。
この調査は、事業についてさらに知ってもらうとともに、さらなる調査を実施するかどうかを検討してもらうための材料を集める事前調査という位置づけであり、処分場の受け入れを求めるものではありません。文献調査が終了した後、改めて地域の意見を聴き、先へ進むかどうかを判断することになっています。
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文献調査の目的と調査する項目
文献調査の目的は、放射性廃棄物の最終処分の検討のため、対象地域の学術論文や詳細な地質図など、地域に関する資料やデータを調べ、分かる範囲で地下の状況を把握することです。これは文献を使った机上調査であって、この段階ではボーリング調査のような現地での作業は行われません。
最終処分法で定められた文献調査で評価する要件としては、①地層の著しい変動(火山・火成活動、断層活動、隆起・侵食などによるもの)がないこと、②地層処分を行おうとする地層に鉱物資源や岩盤としての強度が小さく地下施設建設が困難となる未固結堆積物がないことが求められており、これらの項目について文献・データを収集し、評価されます。その結果を用いて、概要調査地区の候補が検討されます。
文献調査の開始には、市町村からNUMOへ応募する方法と、国からの申入れを市町村が受諾する方法があります。
■処分事業の流れ
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