このページの要約
- 2024年11月28日現在、福島第一原子力発電所の敷地内には約1,000基のタンクが設置され、約129万トンの水が保管されています。タンクに保管しているALPS処理水については、海洋放出を2023年8月から実施しています。ALPS処理水に含まれる「トリチウム」は、政府方針で示された上限値を下回るように大量の海水で希釈したうえで放出しており、放出後の海域モニタリングによるトリチウム濃度は、WHOが示す飲料水の基準値を大幅に下回る、安全なレベルとなっています。
- 放出後の放射性物質の拡散・移行状態の確認では、海水、魚類、海藻類の海域モニタリング結果には有意な変動は確認されていません。また、国際原子力機関(IAEA)の継続的な検証等を通じ、海洋放出の取り組みの安全性および透明性を確保するとともに、計画・実績、安全性に関するデータを国内および国際社会に向けて公開しています。
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汚染水対策の状況
山側から海側へ流れている地下水や破損した建屋から流入する雨水などが原子炉建屋へ流れ込んでいます。その流入した水が燃料デブリに接触し建屋内に溜まっている高濃度の放射性物質を含む水と混ざることで汚染水が新たに発生しています。
汚染水対策は、汚染源を「取り除く」、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」という三つの基本方針に沿って、地下水を安定的に制御するための重層的な対策が進められています。
「取り除く」については、高濃度汚染水の浄化処理が2015年5月に完了し、高濃度汚染水によるリスクが低減されました。「近づけない」については、原子炉建屋へ流入する雨水や地下水による汚染水の発生量が約470㎥/日(2014年度平均)から約80㎥/日(2023年度平均)まで減少しました。「漏らさない」については、発電所港湾内の海水中の放射性物質(セシウム)濃度が事故直後と比較して、100万分の1程度まで減少しました。
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汚染水の浄化処理
汚染水に含まれる放射性物質によるリスクを低減させるため、浄化処理を行っています。まず、セシウム吸着装置で汚染水に含まれる放射性物質の大部分を占めるセシウムを取り除きます。次に、淡水化装置で塩分を分離させます。この塩分を分離した淡水側の水は、燃料デブリを冷やす水として原子炉内に注水し再利用しています。一方、淡水化装置で分離した塩水側の水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理することによって、トリチウム以外の大部分の放射性核種を取り除いています。
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タンクへの貯蔵の状況
2024年11月28日現在、敷地内には約1,000基のタンクが設置され、約129万トンの水が保管されています。タンクには、セシウムを取り除いた水(ストロンチウム処理水)と多核種除去設備で処理した水(ALPS処理水等)が保管されていますが、ALPS処理水等が全体の99%を占めています。
事故から2年後頃までは、ALPSの設備導入を検討している段階であったため、セシウム以外の放射性物質が除去できていない高濃度汚染水があり、その時期はタンクに貯蔵する際の放射性物質の濃度の基準を下回ることを優先していたため、環境へ処分するための基準を満たしていない処理途上水もタンクに貯蔵されています。これらは、処分するための基準が満たされるまで浄化処理されますが、その間タンクに貯蔵されています(保管中の水の約7割)。
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ALPS処理水の処分方法
タンクに保管しているALPS処理水については、2021年4月に政府により決定された「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、多核種除去設備(ALPS)等で浄化した「ALPS処理水」の海洋放出を、2023年8月から実施しています。
ALPS処理水に含まれる「トリチウム」は、政府方針で示された上限値を下回るよう大量の海水で希釈したうえで放出しており、放出後の海域モニタリングによるトリチウムの濃度は、世界保健機関(WHO)が示す飲料水の基準値を大幅に下回る、安全なレベルとなっています。放出後の放射性物質の拡散・移行状況の確認では、海水、魚類、海藻類の海域モニタリング結果には有意な変動は確認されていません。分析結果は「包括的海域モニタリング閲覧システム(ORBS)」にてデータを公開しています。国際原子力機関(IAEA)の継続的な検証等を通じ、海洋放出の取り組みの安全性および透明性を確保するとともに、計画・実績、安全性に関するデータを国内および国際社会に向けて公開しています。
■ALPS処理水の海洋放出の設備の全体像

①測定・確認用設備
ALPS処理水に含まれるトリチウム、62核種、炭素14を希釈放出前に測定(第三者機関による測定を含む)し、62核種および炭素14が環境への放出に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化されていることを確認する。
②希釈設備
海水希釈後のトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットル※未満となるよう、100倍以上の海水で十分に希釈する。なお、年間トリチウム放出量は22兆ベクレル※を下回る水準とする。
- ・海水希釈後のトリチウム濃度は、ALPS処理水の流量と希釈する海水の流量をリアルタイムに監視し、両方の割合で希釈後の水が1,500ベクレル/リットルを下回ることを確認する。
- ・海水希釈後のALPS処理水について、放出中毎日サンプリングし、そのトリチウム濃度が1,500ベクレル/リットルを確実に下回っていることを確認し、速やかに公表する。
- ・当面の間は海洋放出前の混合・希釈の状況で放水立杭を活用して直接確認した後、放出を開始する。
※告示濃度限度(60,000ベクレル/リットル)の40分の1であり、WHO飲料水基準(10,000ベクレル/リットル)の7分の1程度
③取水・放水設備
取水設備については、港湾内の放射性物質の影響を避けるため、港湾外からの取水とする。放水設備については、放出した水が取水した海水に再循環することを抑制するため海底トンネル(約1km)を経由して放出する。
④異常時の措置
希釈用の海水ポンプが停止した場合は、緊急遮断弁を速やかに閉じて放出を停止する。また、海域モニタリングで異常値が確認された場合も、一旦放出を停止する。
- ・緊急遮断弁は、津波対策の観点から防潮堤内に1台、放出量最小化の観点から希釈海水と混合する手前に1台、計2台を設置し、多重性を備える。
資料提供:東京電力ホールディングス(株)