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再処理の工程
【受入れ・貯蔵】
再処理工場へ運び込まれた使用済燃料は、輸送容器(キャスク)から取り出され、燃料貯蔵プールで冷却・貯蔵されます。
【せん断・溶解】
硝酸を入れた溶解槽に細かく切断した使用済燃料を溶かし、燃料部分と被覆管部分に分別します。燃料を溶かした硝酸溶液は分離工程へ送られ、溶け残った被覆管などの金属片は固体廃棄物として処理されます。
【分離】
硝酸溶液をウラン・プルトニウムと核分裂生成物に分離します。さらに、ウランとプルトニウムも分離し、精製工程へ送られます。
この工程で分離された核分裂生成物を高レベル放射性廃棄物といいます。これらは溶融炉の中で融かしたガラスと混ぜ合わせ、ステンレス鋼製容器(キャニスタ)に流し込み、冷やし固められます(ガラス固化体)。
【精製】
ウラン溶液、プルトニウム溶液の中に含まれている微量の核分裂生成物を取り除いたものが脱硝工程へ送られます。
【脱硝・製品貯蔵】
精製されたウラン溶液、プルトニウム溶液から硝酸を蒸発・熱分解させ、ウラン酸化物粉末とウラン・プルトニウム混合酸化物粉末(MOX粉末)にします。それぞれの粉末は、燃料加工施設などに運ばれるまで貯蔵されます。
■再処理の工程
出典:日本原燃(株)HPより作成
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再処理工場の現状
再処理は、核燃料サイクルの要となる工程です。国内では、これまでに核燃料サイクル開発機構(現:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 JAEA、Japan Atomic Energy Agency)の東海再処理施設での実績があり、現在、日本原燃(株)が、日本初の商業用再処理工場(年間最大再処理能力800トン・ウラン)の建設を進めています。
2006年3月よりアクティブ試験(実際の使用済燃料を使った総合試験)が実施され、最大処理能力での性能確認などの事業者が行うすべての試験が2013年5月に終了しました。現在、しゅん工に向けて、最終的な安全機能や機器設備の性能を確認しています。
なお、再処理工場のしゅん工にあたっては、2013年12月に施行された「核燃料施設等の規制基準」(原子力規制委員会策定)に適合する必要があります。
2014年1月に日本原燃(株)は、原子力規制委員会に対して新規制基準への適合性の確認申請を行っており、2020年7月29日に新規制基準に適合しているとの許可を受けました。
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MOX燃料の使用
再処理によって使用済燃料から回収したプルトニウムと、ウランを混ぜてMOX燃料をつくり、現在の原子力発電所(軽水炉)で再利用することをプルサーマルといいます。
プルトニウムは、原子炉内でウラン238が中性子を吸収して生成されるため、MOX燃料を使用しない場合においても原子力発電の過程で生産利用されています。
ウラン燃料を利用している軽水炉でも発電量の約3分の1は、プルトニウムの核分裂による発生エネルギーが担っています。プルサーマルの安全性については、1995年に原子力安全委員会(当時)によって、MOX燃料の割合が3分の1程度までであれば、ウラン燃料のみを使う場合と同様に扱えることが確認されています。
なお、使用済MOX燃料についても、使用済ウラン燃料と同じように再処理する方針で、国内外で再処理された実績があり、技術的には可能とされています。
原子力事業者は、2030年度までに少なくても12基の原子炉でプルサーマルの実施を目指し、最終的には16〜18基の原子炉でプルサーマルの導入を図ることとしています。
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使用済燃料の中間貯蔵
原子力発電所で使い終えた使用済燃料は、再処理するために再処理工場へ運び出されますが、それまでの間は、原子力発電所の敷地内で安全に管理・貯蔵されています。
使用済燃料を貯蔵する方式には、水の入ったプールの中に貯蔵する方式(湿式)と金属キャスクに入れて貯蔵する方式(乾式)の二種類があります。
2005年11月に、東京電力ホールディングス(株)と日本原子力発電(株)が青森県むつ市に設立した「リサイクル燃料貯蔵(株)(RFS、Recyclable-Fuel Storage Company)」によって、2010年8月から乾式貯蔵方式の中間貯蔵施設(リサイクル燃料備蓄センター)の工事が開始され、2013年8月に燃料貯蔵建屋3,000トン分が完成しました。
なお、中間貯蔵施設の操業開始にあたっては、2013年12月に施行された原子力規制委員会の「核燃料施設等の規制基準」に適合する必要があり、2014年1月、RFSによる新規制基準への適合性の確認申請が行われており、2020年11月11日に認可されました。
貯蔵には、専用の鋼鉄製容器(キャスク)が使用されます。キャスクは、使用済燃料の放射性物質を閉じ込めたり、放射線を遮へいしたり、核分裂の連鎖反応による臨界を防止する機能があります。また、発生する熱を取り除くこともできます。
再処理工場へ運び出されるまでの間、使用済燃料が入ったキャスクは、コンクリート製の建屋で貯蔵されます。
3,000トン分の貯蔵建屋には、最大288基のキャスクを貯蔵でき、建屋の使用開始から、50年間貯蔵することとなっています。最終的な貯蔵量は、5,000トンで、そのうち東京電力ホールディングス分として4,000トン程度、日本原子力発電分として、1,000トン程度の貯蔵が計画されています。
また、2023年8月、中国電力(株)は山口県上関町の所有地において中間貯蔵施設に係る調査・検討の実施を山口県上関町に申し入れ了承を受けました。中国電力(株)は立地可能性を確認するとともに、計画の検討に必要なデータを取得するための調査を同月から開始しています。
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関連情報(詳細):電気事業連合会
「使用済燃料の
貯蔵方法(湿式と乾式)」
東海第二発電所使用済燃料乾式貯蔵施設(茨城県東海村)
写真提供:日本原子力発電(株)
リサイクル燃料備蓄センター(青森県むつ市)
写真提供:リサイクル燃料貯蔵(株)
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使用済燃料などの輸送
ウランやプルトニウムなどを含む核燃料物質や放射性物質の輸送は、国際原子力機関(IAEA)の安全輸送規則を取り入れた基準に沿って進められます。
対象となるものは、原子力発電所で使用する新燃料や、使用済燃料のほか、イギリスやフランスに委託した使用済燃料の再処理にともない発生し、日本へ返還されるガラス固化体などです。これらは、核燃料物質の種類や量に応じた専用の輸送容器に入れられ、トラックやトレーラー、専用の輸送船で輸送されます。
発電に使い終わった使用済燃料を海外の再処理工場や原子力発電所の敷地外にある使用済燃料中間貯蔵施設へ輸送する際には、主に海上輸送されます。
輸送容器については、臨界を起こさないこと、放射性物質を密封すること、放射線を遮へいすること、発生する熱を除去することなどの機能が必要です。そのため、落下試験、耐火試験、浸漬試験などでも健全性を保てることが必要になります。