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地球温暖化のしくみ
イギリスでの産業革命以降、急速に増えてきた化石燃料の利用にともない、CO2の排出量が大幅に増えてきました。CO2やメタンなどの温室効果ガスは、太陽からの光エネルギーをほぼ完全に通過させる一方で、地表から放出される熱(赤外線など)が宇宙へ逃げるのを妨げる効果があります。大気中の温室効果ガスの濃度が増加し続けると、地球の平均気温が上昇し、地球にさまざまな影響を与えることが予想されています。
■世界のCO2排出量の推移
(注) 四捨五入の関係で合計値が合わない場合がある。ロシアについては1990年以降の排出量を記載。1990年以前については、その他の国として集計
出典:(一財)日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧2023」より作成
■CO2増加による気温上昇の実績と予測
出典:(※1・※2)気象庁ホームページ、
(※3)環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(2021)」、
(※4)環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~」等より作成
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脱炭素社会に向けた「国際会議」
「国連気候変動枠組条約締約国会議(Conferenceof the Parties、以下COP)」とは、国連気候変動枠組条約の加盟国が、条約に関する物事を決定するための最高意思決定機関です。条約は1992年に採択され、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目標としています。
COPは1995年から毎年開催されており、気候変動対策のための枠組や方針が決定されてきました。COP3の京都議定書では、2020年までの温室効果ガス排出削減の目標を定める枠組が設定されました。COP21のパリ協定では、2020年以降も先進国・途上国の区別なく世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く、1.5℃に抑える努力を行うことが決まりました。COP26のグラスゴー気候合意では、1.5℃目標の達成に向けて温室効果ガス排出量実質ゼロと2030年に向けて野心的な対策を各国に求めることが盛り込まれました。2022年11月にエジプトで開催されたCOP27では、気候変動の悪影響を受けやすい途上国を主な対象に、悪影響にともなう損失と損害支援のための基金を設置することが決定されました。また、同意された実施計画には、2100年の世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑える努力を追求することや、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減することなどが明記されました。
COP28が2023年11月30日から12月13日までアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催されました。世界全体の気候変動対策の進捗を評価する「グローバル・ストックテイク」が初めて行われ、成果文書として「化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」ことを採択しました。また、2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍とし、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍にすることや、排出削減対策がとられていない石炭火力発電の段階的な削減に向けた努力を加速することでも合意しました。そして、日本を含む22か国が「2050年までに原子力発電量を3倍にする」旨の共同宣言を発表しました(アルメニアも参加し、賛同国は23カ国)。
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カーボンニュートラルの実現に向けて
2021年4月現在、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを125カ国・1地域が表明しています。これらの国のCO2排出量は世界全体の約4割(エネルギー起源CO2のみ/2017年実績)にのぼります。また、2060年までのカーボンニュートラル実現を表明した中国も含めると、世界全体の約3分の2のCO2を排出している国がカーボンニュートラルを表明していることになります。各国の表明内容はさまざまですが、カーボンニュートラルを実現するためには複数のシナリオを掲げて取り組んでいくこととしています。
■日本・EU・英国・米国・中国のカーボンニュートラル表明状況
出典:各国資料から経済産業省作成
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温室効果ガス排出の削減についての取り組み
2021年度の日本の温室効果ガスの総排出量は、11億7,000万トンで2013年度の14億800万トンと比べると、20%減少しました。コロナ禍の前年度からは若干増加したものの、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の再稼働などによってエネルギー起源(燃料の燃焼や電気や熱の使用にともない排出される)のCO2排出量が減少したことなどが要因となります。
2021年6月、カーボンニュートラルへの挑戦を「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策として、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。特に温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みを進める必要があることから、電力部門の脱炭素化を大前提としています。現在の技術水準を前提とすれば、すべての電力需要を100%単一種類の電源でまかなうことは一般的に困難であることから、あらゆる選択肢を追求するとし、次のような方向性が示されています。
【再生可能エネルギー】
- ・コストを低減し、地域と共生可能な適地を確保し、最大限導入する。
- ・蓄電池なども活用し変動する出力の調整能力を拡大する。
- ・洋上風力産業と蓄電池産業、次世代型太陽光産業、地熱産業を育成していく。
【火力発電】
- ・CO2回収を前提とした利用を選択肢として最大限追求する。技術を確立し、あわせてコストを低減していく。
- ・水素発電は、選択肢として最大限追求していく。供給量と需要量をともに拡大し、インフラを整備し、コストを低減する。水素産業の創出と同時に、カーボンリサイクル産業や燃料アンモニア産業を創出していく。
【原子力発電】
- ・可能な限り依存度を低減しつつも、規制基準の適合後は再稼働を進めるとともに、実効性のある原子力規制や原子力防災体制の構築を着実に推進する。
- ・安全性などに優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成などを推進する。
ワンポイント情報
◆G7広島サミット首脳コミュニケ(成果文書)の要点◆
2023年5月19日~21日、主要先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島で開催されました。ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、混迷を深めるなか、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島を電撃訪問したことから、ウクライナ情勢が最大の関心事となり、世界的にも大きな注目を集めました。「米中対立」や「西側と中露の対立」へと世界の分断が深化するなかで、今回の主要テーマの一つとして、ロシアによるウクライナ侵略後に不安定化したエネルギー安全保障や、気候変動対策と脱炭素化への取り組み強化がありました。
G7広島サミット首脳コミュニケ(成果文書)のうち、エネルギーについての要点は以下の通りです。
[エネルギー]
- ●エネルギー安全保障、気候危機および地政学的リスクに一体的に取り組むことをコミットする。
- ●各国のエネルギー事情、産業・社会構造および地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、これらの道筋が遅くとも2050年までにネット・ゼロという共通目標につながることを強調する。
- ●再生可能エネルギーの世界的な導入拡大およびコストの引き下げに貢献する。
- ●排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設終了に向けて取り組んでいく。排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。
- ●遅くとも2050年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウト(段階的廃止)を加速させる」というコミットメントを強調し、他国に対して我々とともに同様の行動を取ることを呼びかける。
- ●ガス部門への投資が、現下の危機およびこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する。
- ●東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展と日本の透明性のある取り組みを歓迎する。ALPS処理水の放出に関する国際原子力機関(IAEA)の独立したレビューを支持する。