原子力総合パンフレット Web版

福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた取り組み

廃止措置を安全に効率よく進めるための取り組み

長期に及ぶ廃止措置を達成するため、汚染水対策をはじめ、作業員の被ばくを抑えるための
発電所構内の除染作業や働きやすい環境の整備などが進められています。

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汚染水対策の基本方針

溶けて固まった燃料を冷やす水と原子炉建屋に流入した地下水が混ざることで発生している汚染水を減らすための取り組みが行われています。
汚染水対策は、汚染源を「取り除く」、汚染源に水を「近づけない」、汚染水を「漏らさない」という三つの基本方針に沿って進められています。
また、原子炉内の温度などを確認しながら、原子炉への注水量を段階的に減らしています。

専門情報:東京電力ホールディングス(株)「汚染水対策の主な取り組み」

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汚染源を「取り除く」

①多核種除去設備などによる汚染水の浄化

貯蔵タンクに溜めている汚染水から放射性物質を取り除き、汚染水を浄化しています。
多核種除去設備(ALPS、Advanced Liquid Processing System)などの複数の設備により汚染水の浄化を行い、ストロンチウムを多く含む高濃度汚染水(RO濃縮塩水)の処理が完了しています。
浄化された水には、トリチウムが含まれています。トリチウムは自然界にも存在するもので、外部被ばくによる影響は、ほとんどありません。このトリチウムを含む水の取り扱いについては、総合的な検討が進められています。

※RO濃縮塩水とは、セシウム吸着装置でセシウムを除去(2015年1月よりストロンチウムも100分の1程度まで除去可能)した後、汚染水から塩分を除去するRO(Reverse Osmosis:逆浸透膜濾過)装置で淡水と分離したストロンチウムが多く含まれる汚染水です。

②トレンチ内の高濃度の汚染水の除去

建屋の海側の配管やケーブルなどが収納された地下トンネル(トレンチ)から高濃度汚染水を除去し、トレンチ内の充墳・閉塞作業を完了しました。

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汚染源に水を「近づけない」

③建屋山側の井戸からくみ上げ、海へ排水

建屋内に流れ込む地下水の量を減らすため、建屋山側で地下水をくみ上げ、水質基準を満たしていることを確認したうえで、海へ排水する「地下水バイパス」を運用しています。

④建屋付近の井戸からくみ上げ、海へ排水

建屋付近の地下水位を下げるため、建屋近くの井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げて浄化し、水質基準を満たした水のみを港湾内に排水しています。

⑤凍土方式の陸側遮水壁の設置

建屋内への地下水の流入を抑えるため、建屋のまわりに凍土式の遮水壁を設けました。地中に埋めた凍結管の内部に氷点下30℃以下の冷却材を循環させ、まわりの土壌を凍らせて遮水壁とするものです。

⑥雨水の土壌への浸透を抑える敷地舗装

建屋に流れ込む地下水の大半は、敷地などに降る雨水が由来であることから、広い範囲の敷地などを舗装する表面遮水対策を実施しています。

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汚染水を「漏らさない」

⑦タンク堰のかさ上げ、二重化

汚染水の貯蔵タンクの堰の外への漏えいを防ぐため、堰のかさ上げ作業を行いました。さらに、外周にも堰を設置し、また、どちらの堰にも溜まった雨水を排水しやすくするためのピットを設置しています。

⑧水ガラスによる地盤改良

放射性物質を含む地下水を海洋に漏らさないため、酸によって中和されて固まる性質がある水ガラスを活用して、護岸の地盤改良を行っています。

⑨海側遮水壁の設置

汚染水を海洋に漏らさないため、海側の護岸に遮水壁を設置しています。

海側遮水壁

海側遮水壁

写真提供:東京電力ホールディングス(株)

⑩タンクの増設(溶接型タンクへの交換)

横置きタンクやボルト締め型タンクから、漏えいリスクの低い溶接型タンクへ置き換える作業を進めています。

福島第一原子力発電所周辺の地下水分布イメージと汚染水対策

福島第一原子力発電所周辺の地下水分布イメージと汚染水対策

出典:東京電力ホールディングス(株)資料より作成

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放射線量の低減

表土のはぎ取りや地面の表層の土と下の土との入れ替え、地表部のアスファルト施工(フェーシング)など、さまざまな方法で除染を行った結果、放射線量の高い1~4号機周辺を除いた構内エリアの約95%が全面マスクの不要な場所になっています。
2017年10月の作業員の平均被ばく線量は、月平均0.31ミリシーベルトでした。これは法令で定められている被ばく限度と比較して十分低い値となっています。

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作業環境の改善

【休憩施設の整備】

セキュリティーチェックや防護装備の着用、線量計の配布・回収、退域時の汚染測定などを行う入退域管理施設と直結する、約1,200人が利用可能な大型休憩所がつくられました。この運用により、現場の近くで食事や休憩がとれるなど、作業環境が改善されています。

【食生活の充実】

発電所近くの福島県大熊町に福島給食センターが設置されました。ここで調理された福島県産の食材を使った温かい食事が、発電所内に提供されています。

【医療体制の整備】

救急科専門医師、救急救命士、看護師が常駐する救急医療室を設置しました。また、超音波検査装置、AED(自動心臓マッサージ器)などの救急用医療機器を充実させ、救急車の追加配備も行われています。

【女性の就業エリアの拡大】

発電所内の放射線量の低下や作業環境の改善が進んだことで、現在は、発電所のすべてのエリアで女性が業務を行うことができます。

【新事務本館の運用開始】

2016年10月3日より、廃止措置の拠点となる新事務本館が運用されています。約320席を有する食堂や執務室のほか、放射線業務従事者の登録や作業者証の発行手続きを行うスペースが設置され、ホールボディーカウンターも2台配備されています。

  • 大型休憩施設

    大型休憩施設

  • 新事務本館 外観

    新事務本館 外観

  • 福島給食センター

    福島給食センター

写真提供:東京電力ホールディングス(株)

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透明性の確保

福島第一原子力発電所では、国際原子力機関(IAEA)の調査団の視察を積極的に受け入れています。また、東京電力取締役会の諮問機関である「原子力改革監視委員会」が、外部の視点で監視・監督をしています。 今後も国際機関や外部専門家の提言を得ながら、透明性を十分に確保して、廃止措置を進めていくこととしています。

ワンポイント情報

作業員の被ばくと健康への影響

国際的な専門家集団である原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、2014年4月2日に「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」(UNSCEAR2013年報告書)を公表しました。
事故発生から19か月間、福島第一原子力発電所での作業にあたった作業員約2万5,000人には、急性被ばくによる健康影響や死亡は認められていません。そのうち99.3%の作業員の実効線量(被ばくの全身への影響を表す)は100ミリシーベルト未満で、平均約10ミリシーベルトでした。このレベルの線量でのがんのリスクは低く、自然発生のがんと識別できるようながんの増加があるとは考えられないと述べられています。
また、0.7%にあたる約170人が100ミリシーベルト以上(最高679ミリシーベルト)の被ばくをしましたが、放射線による健康被害は確認されておらず、事故ならびにそれ以降に死亡した作業員の死因については、放射線は関係ないとしています。

根拠データ:UNSCEAR「The Fukushima-Daiichi nuclear power plant accident」

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