原子力総合パンフレット Web版

4章 原子力施設の規制と安全性向上対策

自然現象や重大事故への対策

1

自然災害や火災への対策

事業者は、火山や竜巻、森林火災などの自然災害への対策や原子力発電所内の火災への対策を行っています。

【火山】

原子力発電所の半径160km圏内の火山を調査し、火砕流や火山灰の到達の可能性と到達した場合の影響を評価し、防護措置を講じています。

【竜巻】

国内で観測された最大級の竜巻(最大風速100m/秒)に対しても、安全上重要な機器や配管が機能を失うことのないように飛来物防護設備などを設置しています。

【森林火災】

発電所周辺での森林火災が発電所構内に燃え広がらないように、樹木を伐採し、防火帯を整備しています。

【原子力発電所内の火災】

原子力発電所内の火災に対しては、火災感知設備や消火設備の設置、難燃ケーブルの使用、耐火壁により防護された火災区域の設定など、火災の影響を軽減させる防護対策を実施しています。

2

冷却機能が喪失した場合の対策

福島第一原子力発電所の事故では、地震や津波などで電源を失ったことにより、原子炉を冷やす機能が順次喪失しました。また、原子炉を冷却する海水ポンプが冠水し、原子炉内部の熱を海水へ逃がす除熱機能が失われました。
地震や津波などで原子炉を冷やす複数の冷却設備が同時に機能を失う場合を想定し、原子炉の炉心が損傷する重大事故を防ぐため、冷却機能の復旧や代替する設備が整備されています。
原子炉と使用済燃料プールを冷やし続けるためには、冷却用の水を供給するポンプや水源も必要となります。すでに設置されている冷却設備が使用できなくなっても、すぐに代替できる大容量ポンプが配備されています。調達に時間のかかる海水ポンプモータは予備品が確保されています。また、緊急時の水源もタンクや河川、ダム、貯水池など、多様化が図られています。
さらに、すでに設置されている非常用ポンプが破損した場合に備え、可搬型ポンプなども配備されています。

3

電源が喪失した場合の対策

炉心で使用中の燃料や、プールで保管中の使用済燃料などの冷却には水、その水を注入するポンプ、そのポンプを動かす「電源」の確保が重要です。
福島第一原子力発電所事故では、地震による地すべりで送電鉄塔が倒壊し、外部電源を喪失しました。これを踏まえ、送電鉄塔周辺の地盤の安全性が確認されています。
緊急時は、中央制御室でのプラントの監視やポンプによる原子炉への注水、発電所構内での通信の確保など、あらゆる場面で電源が必要となるため、地震や津波などで送電線や非常用ディーゼル発電機が同時に喪失しないよう、独立した2ルート以上の外部電源(送電線)などが確保されています。
事業者は、変圧器などの電気設備の浸水も考慮し、常設の非常用発電機が機能しない事態が起きても、これをバックアップする移動可能な非常用電源(電源車など)や常設の空冷式の非常用発電機を配備しています。また、発電所内のすべての交流電源が喪失した場合も、原子炉内への注水などに使用する直流電源を長時間供給できるよう、バッテリーなどの設備を強化しています。

4

重大事故に至った場合の対策

原子炉の炉心を損傷するような重大な事故に至った場合も想定し、原子炉格納容器の破損防止や放射性物質の環境への拡散の抑制などの対策が講じられています。
重大事故が発生した際、原子炉格納容器の中の圧力が高くなって、冷却用の注水ができなくなったり、原子炉格納容器が破損したりするのを防ぐ必要があります。そこで、気体の一部を外部に排出させ、原子炉格納容器内の圧力と温度を下げる緊急措置「ベント」を行うため、気体中に含まれる放射性物質を減らしつつ、排気する「フィルタ・ベント」が設置されています。
また、水素爆発を防ぐため、水素濃度を低減できる「水素再結合装置」や原子炉建屋の上部から排気する設備なども設置されています。
さらに、原子力発電所の外への放射性物質の拡散を抑えるため、移動式大容量ポンプ車や放水砲などによる放水手段が確保されています。

可搬型大型送水ポンプ車

可搬型大型送水ポンプ車

写真提供:北海道電力(株)

  • 電源車

    電源車

    写真提供:東北電力(株)

  • 空冷式非常用発電装置

    空冷式非常用発電装置

    写真提供:関西電力(株)

  • フィルタ・ベント

    フィルタ・ベント

    写真提供:中国電力(株)

  • 放水砲

    放水砲

    写真提供:中国電力(株)

重大事故対策(BWRの例)

重大事故対策(BWRの例)

出典:電気事業連合会「原子力コンセンサス」より作成

重大事故対策(PWRの例)

重大事故対策(PWRの例)

出典:電気事業連合会「原子力コンセンサス」より作成

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