原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

エネルギーの安定供給の確保

1

エネルギー資源の安定確保

エネルギーを安定的に、必要な量を低廉な価格で確保することを「エネルギー安全保障」といいます。すべての国民にとって、この状態を継続的に維持することが非常に重要です。
日本のエネルギー自給率(2021年)は、原子力を国産とした場合でも13.4%しかありません。これは、先進国のなかでも極めて低い水準となっています。日本のエネルギー自給率が低い理由としては、石油・石炭・天然ガスといった資源に乏しいことが主な原因です。エネルギー自給率がロシア、カナダ、ブラジルのように100%を超える国は、自国内で一次エネルギーを確保できているだけでなく、他国へ輸出していることを意味しています。
陸続きのヨーロッパ諸国では、国境を越えて送電線や天然ガスのパイプラインが張り巡らされているため、自国で電力を安定的に供給することができなくなった場合でも、発電容量の大きい周辺国との間で電力の輸出入が行われています。
これに対し、島国の日本は、周辺国とのエネルギーの融通は難しいのが現状です。資源小国で島国の日本にとって、エネルギー資源を安定して、かつ経済的に確保していくことは、国家の基盤にかかわる重要な問題です。

関連情報(詳細):エネ百科「ニュースでよく聞くあのはなし/知ってほしい!日本のエネルギーの特殊な事情」

主要国のエネルギー自給率比較(2020年)

主要国のエネルギー自給率比較(2020年)
  • ※原子力を国産とした場合の数値となっている。原子力発電の燃料となるウランは、一度輸入すると長期間使用することができ、再処理してリサイクルすることも可能なため、準国産エネルギーとして扱われる。
  • ※100%以上は輸出していることを表す。

出典:IEA「Data and statistics」より作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

日本のエネルギー自給率の推移

日本のエネルギー自給率の推移

エネルギー自給率:生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、国内で確保できる比率

出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2021年速報値

日本の一次エネルギー供給実績

日本の一次エネルギー供給実績

(注)1PJ(=1015J)は原油約25,800kℓの熱量に相当(PJ:ペタジュール)
「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている

出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

2

エネルギー供給のリスク

石炭はオーストラリアやロシア、インドネシアなどから、天然ガスはオーストラリアや東南アジア、中東、ロシアなどから輸入していますが、石油は依然として90%以上を中東からの輸入に頼っています(2021年度実績)。
中東からホルムズ海峡、マラッカ海峡を通って、石油や天然ガスを日本へ運ぶ海路(シーレーン)の安全通行の確保がエネルギー安全保障上の重要な問題となっています。
2021年は新型コロナウイルス感染からの経済回復にともなってエネルギー需要が急拡大する一方で、世界的な天候不順や災害、化石燃料への構造的な投資不足、地政学的緊張などの複合的な要因によってエネルギー供給が世界的に拡大せず、エネルギーの需給がひっ迫し、2021年後半以降、歴史的なエネルギー価格の高騰が生じています。
2022年2月以降、ロシアのウクライナ侵略により、世界のエネルギー情勢は混迷を深め、エネルギー価格の上昇は一過性のものにとどまらない可能性があります。各国政府は、脱炭素の流れを認識しながらも、安定・安価なエネルギー供給を最優先に、価格抑制策や低所得者などへの支援策、産油国・産ガス国への増産要請、備蓄の強化、調達先の多様化などの政策を展開しています。

〈トピック〉ロシアのウクライナ侵略の影響

日本が輸入する化石燃料の相手国別比率

日本が輸入する化石燃料の相手国別比率
原油
原油
石炭
石炭
天然ガス
天然ガス

(注)四捨五入の関係で合計値が合わない場合がある

出典:※1 石油連盟統計資料、※2 財務省貿易統計より作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

石油や天然ガスを運ぶ海路(シーレーン)

石油や天然ガスを運ぶ海路(シーレーン)
3

国際資源戦略の策定

エネルギー資源の多くを海外から輸入している日本は、エネルギーを巡る世界の動きに大きな影響を受けます。こうした状況を踏まえ、エネルギーの安定供給を確保するために、2020年3月、日本の新しい「国際資源戦略」が策定されました。
これまで中東諸国との関係は、複数のエネルギー関連機関などが個別に構築されていましたが、今後は諸機関が連携し、一体となって構築されることになりました。
また、地政学リスクを踏まえ、石油は中東以外の国々へ、LNGや先端産業において必要不可欠なレアメタルなどは、調達先が特定の国や地域に偏らないよう多角化させることが決められました。さらに、アジア全域での協力関係を深め、日本の石油備蓄を活用して、アジアのエネルギーセキュリティ向上につなげていくこととしています。経済成長が著しいアジア各国では、石油消費量が急増しています。しかし、多くの国では原油の輸入を中東に依存しているうえに、十分な備蓄を保有しておらず、セキュリティ対策が万全とはいえません。
こうしたことから、今後は、日本のための資源を確保するだけでなく、エネルギーセキュリティの維持・向上を図るために世界的な視野で対応を行うことが必要です。

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日本のエネルギー選択の歴史と原子力

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エネルギーミックスの重要性

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日本のエネルギー政策〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策
〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策〜2030年、2050年に向けた方針〜

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〜2030年、2050年に向けた方針〜

エネルギーの安定供給の確保

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エネルギーの経済効率性と価格安定

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環境への適合

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原子力の安定的な利用に向けて〜再稼働、核燃料サイクル、使用済燃料の中間貯蔵〜

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原子力の安定的な利用に向けて〜高レベル放射性廃棄物〜

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国際的な原子力平和利用と核の拡散防止への貢献

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〈参考〉世界の原子力発電の状況

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〈トピック〉電力需給ひっ迫

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〈トピック〉ロシアのウクライナ侵略の影響

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原子力開発の歴史

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日本の原子力施設の状況

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原子力発電のしくみ

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原子炉の種類

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原子力発電所の構成

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原子力発電の特徴

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原子力発電所の廃止措置と解体廃棄物

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核燃料サイクル

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再処理と使用済燃料の中間貯蔵

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低レベル放射性廃棄物

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原子力イノベーション〜革新的な原子力技術への挑戦〜

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放射線と放射能の性質

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放射能・放射線の単位と測定

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被ばくと健康影響

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外部被ばくと内部被ばく

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原子力発電所の規制と検査制度

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原子力発電所の地震の揺れや津波・浸水への対策

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自然現象や重大事故への対策

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原子力施設のさらなる安全性向上に向けた対策

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原子力防災の概要

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原子力災害対策と緊急事態の区分

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初期対応段階での防護措置

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原子力施設と法律

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原子力損害の賠償

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