原子力文化コラム

Vol. 9 (2025/3/26)

学習支援事業の目的と事業が目指す未来とは



当財団が委託を受け運営している、「地層処分事業の理解に向けた選択型学習支援事業」および「地層処分事業の理解に向けた自主企画支援事業」では、本事業にて活動していただいている団体の代表者様等に一堂に会して交流していただく「全国交流会」を経済産業省資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO)の共催で開催しております。
今年度で10回目の開催となった全国交流会ですが、開催の趣旨について主催者のNUMOの担当者と参加した感想について参加団体の方にインタビューいたしました。
 
 

交流と情報交換の場を作ることで
全国の団体の活動の継続・発展を促進

 











原子力発電環境整備機構(NUMO)
広報部 地域コミュニケーショングループ
課長
江崎 久美子氏

――学習支援事業の概要と目的を教えてください。

 地層処分事業は、文献調査の対象となっている地域だけでなく、日本社会にとって重要であり、私たち現役世代で解決すべき課題です。

 学習支援事業は、広く一般の方々が地層処分について関心を寄せ、理解を深めていただくための支援事業です。具体的には、当機構が全国の地層処分事業に関心をお持ちの団体・グループを対象に、地層処分事業に関連する学習活動を支援しています。

―― どのような団体が参加されているのでしょうか?

 支援の対象は5人以上のグループとしており、NPO団体や学校、地域のグループなどさまざまです。本事業は「選択型学習支援事業」と「自主企画支援事業」の2つがあり、選択型は単年度で勉強会や見学会、情報発信ツール制作などのメニューから選んでいただきます。自主企画は複数年の活動で、より発展的な活動を行う団体向けです。現在、「選択型」が93団体、「自主企画」が16団体、計109団体が全国で活動しています。(※2025年2月8日時点)

――年に1度、全国交流会を開催している目的とは?

 北海道から沖縄まで、各地域で活動している学習団体の方々が互いに交流・情報共有を図り、団体間の親睦を深めていただくことが主な目的です。他団体の取り組みを知ることで活動がより継続、発展し、結果として情報発信の機会が増えることを期待しています。



―― 今年度の交流会の特徴を教えてください。

 今年は「未来に繋がる地層処分のためにいま何ができるのか」をメインテーマとし、特に若い世代の参加枠を広げました。第一部では若い世代からのメッセージや思いを伝えていただき、第二部では世代を超えたディスカッションを行うという構成になっています。若い世代の方々にも地層処分の活動が広がり、未来へと繋げていきたいと考えています。

――学習支援事業を継続する意義と、今後の目標をお聞かせください。

 地層処分の問題は、特定地域だけでなく国民全体の理解が必要です。地道な取り組みではありますが、事業を継続することで地層処分事業の活動がより広く理解され、全国に関心の輪が広がることを期待しています。
 一方、当機構職員にとっても、各地で活動される方々との対話が学びの機会にもなっています。みなさまの考えや受け止め方を直接伺える貴重な機会として、今後も大切にしていきたいと思います。
 

一団体の活動ではできない
貴重な学習体験が得られた

 












安藤 七哉氏(大学生)。
エネルギーミライズ所属。
昨年に続いて2度目の全国交流会参加。

――所属しているエネルギーミライズの概要を教えてください。

 エネルギーミライズは、施設見学会や専門家に講義いただく勉強会を通じ、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、知識を深めていくことを目的に発足した団体です。

――安藤さんが地層処分の学習を始めたきっかけとは何だったのでしょうか。

 中学2年生の時に、元東京工業大学助教(現:東京科学大学)の澤田哲生先生が主催する「中学生サミット」に参加したことがきっかけで、関心を持つようになりました。

――NUMOの学習支援事業に参加したことで、どのような活動をされましたか?

 代表の浅野さんを中心に施設見学会や勉強会を開催したり、地層処分について解説したパンフレットや動画の制作を行いました。地層処分については、まだほとんどの方がよく知らない状況だと思います。そこで、パンフレットや動画では、原子力発電を利用すると高レベル放射性廃棄物が発生すること、その処分方法は決まっているけれど処分場の設置場所がまだ決まっていない、といった基本的な事実を伝えることを重視しました。

――学習支援事業で特に印象に残っている活動は何ですか?

 最も印象的だったのは施設見学です。北海道幌延町にあるJAEA幌延深地層研究センターや青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)の使用済燃料の再処理工場、静岡県にある中部電力(株)の浜岡原子力発電所など、さまざまな施設を見学しました。実際に施設を見ることで視野が広がり、地層処分の問題をより身近に感じるようになりました。

 もう一つは、NUMOや日本原子力文化財団から派遣してもらった専門家の方から、お話をうかがう勉強会の開催です。地層処分について、より深い知識を得る機会となりました。

――学習支援事業に参加した感想を教えてください。

 一般の人が見学できない施設を見ることができ、また施設の受け入れを決めた地域住民の方々と対話する機会をいただくなど、NUMOの支援がなければできない貴重な体験ができました。また、見学の際には日本原子力文化財団の職員の方々が同行してくれるので、施設に関する詳しい説明が受けられ、理解を深められたこともありがたいことでした。
 一団体の活動には限界がありますが、支援を受けることで充実した活動になりました。
 
――今回の全国交流会に参加した理由を教えてください。

 昨年、初めて参加して、他の団体の活動を知ることができました。今回は活動されている団体のこの1年の成果や進捗などが知りたくて参加しました。

――今後の展望についてお聞かせください。
 
 機会があれば周囲の人たちに地層処分のことを伝えていきたいと思っています。


 

バックナンバー

vol.9 (2025/3/26) 学習支援事業の目的と事業が目指す未来とは
vol.8 (2025/3/7) 寿都町&神恵内村
北海道後志2町村を訪問して現地の文化に直接触れる体験学習プログラム
vol.7 (2025/1/6) 新年のごあいさつ
vol.6 (2024/10/31) 「原子力の日 特別インタビュー」
原子力に関する探究活動に携わる現役大学生の
原子力やエネルギーに対する思い
vol.5 (2024/9/30) “エネルギー&原子力について一緒に学んで考えよう”
施設見学会・交流会を開催!
第7回 課題研究活動支援事業
vol.4 (2024/8/20) ~日本原子力文化財団設立55周年に寄せて~
国内で確立した教育ノウハウを世界の国々へ
vol.3 (2024/8/1) 理事長退任にあたっての想い ~常に「伝わる」をめざして
vol.2 (2024/7/19) 第117回(5/28) 報道関係者のための原子力講座開催
『中東情勢の行方と日本のエネルギーへの影響』について考える
vol.1 (2024/6/4) デジタル時代に対応した情報発信力の強化のため、ホームページを刷新

ページの先頭へ戻る