活動レポート

WEB交流会 開催レポート 
『地層処分をめぐる海外の最新状況~カナダ編~』

  • 日時
    • 2022年1月16日(日)10:00~11:30
  • 場所
    • オンライン開催(Webex)
  • 参加者
    • 35名
  • 共催
    • 資源エネルギー庁
      原子力発電環境整備機構(NUMO)

  •  
     
  • 開会挨拶
    • 加島 優 経済産業省 資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 総括課長補佐

  • 情報提供「カナダにおける地層処分事業の状況」
  •  長崎 晋也 氏 マクマスター大学物理工学専攻 教授
  •  ① カナダの原子力エネルギー利用の現状
    • カナダでは60%が水力発電、15%が原子力発電。原子力発電は19基。
    • カナダではCANDU炉という独自に開発した原子炉を使用。天然ウランを燃料に、重水で中性子を減速、冷却する仕組み。
    • カナダの原子力産業界は、小型炉を強く推進し、世界的な開発のリーダーを目指している。
    • 1960年代にウラン資源に恵まれていることが分かり、再処理しないことを決定した。

  •  ② 放射性廃棄処分、特に使用済核燃料の処分事業の現状
    • 2020年6月末現在で約300万本の使用済燃料があり、現在のCANDU炉の運転終了時には、約550万本になる。
    • NWMOは2005年に最終報告書をとりまとめ、最終的には地層処分を行うが、当面の約60年間はサイト貯蔵、集中貯蔵を実施するという適応性のある段階的管理を提案。
    • 処分のタイムラインは、地元自治体、住民が決める。関心表明の受付は2010~2012年、サイトの絞り込みは、2023年頃、環境影響評価など建設のための申請が2028年、建設完了は2043年。操業期間は40年、閉鎖前モニタリングを70年というスケジュール感である。
    • 2010~2012年まで公募し、手を挙げた22カ所のうち21カ所で調査を開始。現在はイグナス(花崗岩系)とサウスブルース(堆積岩系)の2カ所が残っている。

  •  ③ 先住民との関係
    • 原子力産業界は、西洋文化と先住民の文化の違いをしっかり認識、尊重してお互いに事業をどのように進めていくのかをいっしょに考えていくことをカナダでは求められている。

  • 質疑応答・意見交換
    • 22カ所、実質21カ所の自治体から手が挙がったとのことだが、日本ではまだ寿都町と神恵内村の2つだけである。何故、多くのところから手が挙がったのか。
      • カナダは非常に自然環境が厳しい、特に冬場。また人口が1,000人程度でほぼ限界集落に等しいところが結構ある。そこでいかに次の世代に仕事を見つけるかが大きな課題。そういった中で、どういったプロジェクトでどういった仕事を作り出すかがポイント。カナダでは仕事を作り出すことが非常に大きな社会的貢献につながっている。そういう意味でこの処分場のプロジェクトは大きな可能性を秘めていると思われたのではないか。

    • カナダはウラン資源が豊富で再処理はしないとのことだが、日本は再処理をして地層処分をする、再処理をしない場合は地中深くに広大な土地や空間が必要になるのか。680m以深に埋めるとなると日本の地層処分の倍の深さになるが処理の仕方の違いを教えて欲しい。
      • 最初はカナダも再処理の研究をしていたが、1960年代にウラン鉱山が発見されて、自分たちはウランに恵まれていることが判り、再処理をしない政策に転換した。
      • 680mの深さに埋めるのは中低レベル放射性廃棄物。この深さは世界的にみても異例だが、カナダの場合はそこまで掘ると頑健な地層があるのでその深さになっている。技術的にも可能という事や費用は嵩むが安全性を優先に設定されている。
      • 高レベル放射性廃棄物は500m程度の深さに埋めるが、再処理をしない使用済燃料にはプルトニウムが残っている。プルトニウム等から発生する熱でベントナイトが100度を超えないようにしたい。ベントナイトが100度の時にある化学条件の地下水と反応するとバリアのベントナイトに少し水が通りやすくなるといった影響が出る可能性あるため、コンテナの間隔をあける必要がある。そのためより広い敷地が必要になるが極端に広くする必要があるというほどではない。
      • 再処理をすれば敷地は広がらないかもしれないが、費用を掛けて再処理工場を建設することになるし、再処理に伴う廃棄物も出てくる。それらを踏まえ、経済的なことやエネルギー政策から、各国で一番最適な方法を選択していると思う。

    • 先住民や地域住民の大人の方々だけでなく、子供への教育、例えば放射線教育、エネルギー教育などはカナダでどれくらい行われているのか。
      • 放射線のことも原子力のことも、賛成反対ではなく教えるべきこと偏りなく教えていると思う。小学校でエネルギー教育は行われている。
      • 歴史については必ずしもきちんと教えられてきていなかった。レジデンシャルスクールの問題が発覚して以降、先住民の文化に触れる機会を広げようとする雰囲気がある。

    • 候補地のイグナスは花崗岩、サウスブルースは堆積岩とのことだが、カナダではどちらが地層処分に適しているか決まっているのか。地元住民の理解が必要ということだが、イグナスとサウスブルースについても理解を得た上で調査しているのか教えて欲しい。
      • 花崗岩か堆積岩かどちらでも地層処分場は作れる。どちらがいいか悪いかはない。ただし、一般論としては花崗岩の方が岩石としての強度があるので、比較的深く掘れるし大きいトンネルができるかもしれない。基本的にはどちらであっても問題ないので、両方の地域が残っている。どちらがいいということではない。
      • 2010~2012年の間に関心のある自治体が手を上げてきた。その応募の段階では理解を得るところまではいってなかったと思う。その後にNWMOからの説明や討論、それらを通して住民が自分たちの町をどうしたいかという議論があり(候補地から)降りる降りないがあった。イグナスにしてもサウスブルースにしても反対する人も賛成する人もいるが、総論としてサポートするという意見が強い。

  • アンケートより
    • 参考になったこと
      • カナダと日本のエネルギー事情や放射性廃棄物の処分法の違いについて知ることができた。
      • 再処理と直接処分によるワンスルー方式では、取り巻く事情が随分異なると感じました。国のエネルギー政策の在り方が確固としたものであると、地層処分事業に対する人々の信頼は増すように思いました。
      • カナダでの最新情報が得られた。カナダも、単なる技術情報だけでなく、住民との対話のやり方など管理面についてが重要であり、関係国で共有されていること。先住民への配慮がなされていること。
      • 長崎先生の話は具体的で示唆に富んでいた。

    • 印象に残ったこと
      • NWMO の組織作りなどは、とても印象に残った。カナダの原子力、地層処分の実情がよく分かった。特に 22 ヵ所手が挙がったことなど。
      • サイト選定プロセスに参加した 21 地域が、すべて原子力発電を有していない自治体でした。日本と同様、消滅集落、限界集落とならないよう、広大な国土のカナダでも、林業、農業等の第 1産業で生計を立てる自治体は、町の活性化や存続を目指し、町づくりに前向きに取り組もうとされている様子を感じました。
      • 候補地の申し出が22ヵ所もあったこと。また、原住民の文化を尊重し協力しあう必要があること。
      • 先生のお話がとてもわかりやすく、また質疑応答にも丁寧にお答えくださいました。先住民のかたがたとのことや、カナダ人のアメリカに対する意識などもとても興味深かったです。