活動レポート

地層処分事業の学習活動にご参加いただいた地域団体等の全国交流会
開催レポート 

パネルディスカッションの様子
  • 日時
    • 2019年2月16日(土)
      13:00~17:30
  • 場所
    • AP浜松町
  • 参加者
    • 84団体106名
  • 主催
    • 資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO)
  • 開会挨拶 那須 良 資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長
      国とNUMOは、科学的特性マップの公表を契機に全国で様々な対話活動や理解活動を行っている。その中でも特に重要と思っているのが、地層処分について自主的に勉強し、情報を発信していただいている今日お集まりの地域団体の皆さま方である。
      地層処分事業は自分事として考えていただけることが難しいテーマであるが、地域団体の皆さまの活動は、まさにこの問題を自分事として捉えていただくための大変貴重な取り組みになっている。本日は団体の皆さまの間でそれぞれの地域での取り組みを共有していただき、国やNUMOの今後の活動についても忌憚のないご意見もいただきたい。

  • パネルディスカッション
    • テーマ「自分事として考えていただくために今何をすべきか」
    •  コーディネーター
      • 崎田裕子 NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット 理事長
    •  パネリスト
      • 大浦宏照 サイエンスコミュニケーター
      • 澤田哲生 学術フォーラム・多価値化の世紀と原子力
      • 平澤拓海 学生団体ENOGプロジェクト
      • 吉村一元 資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策広報室長
      • 伊藤眞一 NUMO理事
      • (登壇者プロフィールはこちら

    • パネルディスカッションの冒頭に資源エネルギー庁とNUMOから、地層処分事業の理解活動の取り組み状況を報告。
      • 資源エネルギー庁 資料:最終処分に関する取組について(PDFはこちら
      • NUMO 資料:2018年度の対話活動について(PDFはこちら

      崎田氏 最終処分について自ら関心を持つだけでなく、周りの方や社会の人たちにも関心を持ってもらうための活動に大変ご苦労されていると思うが、どういうふうに考えて取り組んでいるのか聞かせてほしい。
      大浦氏 地層処分について、もっと若い人に関心を持ってもらいたいと考えている。若い人に勉強会等に参加してもらうために、場のデザイン・雰囲気づくりが必要と考え、カフェバーやディスコ等若者が一度行ってみたいと思いそうな場所で勉強会を開催した。リーフレット1枚にしても漫画を使う等いろいろな人が見てもらえるように頭を悩ませながら若い人を巻き込めるよう努力した。
      澤田氏 全国の中学生等を集めて議論を行う中学生サミットを実施している。参加学生が、まずは「賛成」「反対」という考えに捉われずに、ゼロベースで講義を聞き、皆で話し合いを行いながら相手の考えを取り入れ、自分の考えをバージョンアップしていけるように取り組んでいる。また、議論をファシリテートするリーダー的な学生の育成も行っており、意欲的な子に声をかけてファシリテートしてもらう。その学生を見ていた他の学生は次の機会に自分もやってみようとつながっていく。つなげていくことがとても大切である。
      参加学生の募集等のアプローチは、地域で似たような活動を行っている方を頼りに協力をお願いしている。そのため、この全国交流会は地域の方々と知り合いになれるいい機会となっている。
      平澤氏 学生が地層処分だけに関心を持つかというと、それは現実的ではないと思っており、勉強会等に参加してもらうためには、例えば「普段会えないエネ庁の人に会える」「自分たちが会の企画・運営ができる」等の特典を準備しておく必要があると思う。単発で終わらせるのではなく、一緒に企画・運営した仲間が別の団体で勉強会等を企画し、どんどん広がっていけばと考えている。
      崎田氏 楽しい仕掛け、場づくりのためにはどうしたらよいかアドバイスをいただきたい。
      大浦氏 場のデザインづくりで、何か新しい方法や手段を取り入れる時には、自分一人で考えるのではなく、周りの方からアドバイスをもらいながら取り組んでいる。関心を持ってもらうには、その人の心に響く「動機づけ」が必要だと思う。この全国交流会にはいろいろなアイデアを持った人が集まっているので、交流できればと思っている。
      崎田氏 エネ庁やNUMOに、今後こういうふうに事業を進めてほしいという要望や期待することがあれば聞かせてほしい。
      澤田氏 現在行っている中学生サミットに生徒を参加させたいと考えている学校は潜在的に多いと思っており、今後はもっと広げていきたい。
      参加学生から「原子力のこと、NUMOのことを普通の学生は知らない。もっと知ってもらった方がよい」との意見が出ていた。裏を返せば、若い世代にNUMOの存在感がないということである。
      平澤氏 組織より個人の力が強くなっている時代だと感じており、発信力の高い個人と組んだり、インスタグラムのフォロワー数の多い人と組む等、SNSでの発信に力を入れてはどうか。若い世代はSNSをよく使うので知る機会を創出できるはず。
      大浦氏 人を集める力を持っている方と、アイデアやコンテンツを持っている方をうまくつなぐような仕掛けを考えれば、もう少し活性化するのではないか。著名人の講演、ゲーム、VR等の企画をたくさん準備しておいて、そこから好きな企画を選んでもらうような形にしておけば、活動が進めやすくなるのではないか。
      吉村 コンテンツの提供等議論のきっかけがあれば、参加されている方は議論がしやすくなると思う。例えば、カードやゲームを使った理解活動等、大事な議論をする時に初めて聞く方が集まるようなきっかけになるようなことを企画していきたい。
      学生フォーラムを学生に企画・運営してもらった際、参加者勧誘のための案内ポスターを学生が作ったが、インパクトのあるメッセージとイラストに会の名前と日時の記載があるだけで、会の内容や場所の情報はなかった。実はポスターにQRコードがあって、これを読み取ることで会の詳細が分かる仕組みになっていた。大人の考えではそういったデザインにはならず、若い世代には若い世代のアイデアを活用して情報発信していくのが大事と気付かされることとなった。
      伊藤 NUMOという組織が世の中に知られていないというのは、私どもの努力不足であると思っており何とかしないといけないと感じた。若い世代には、文字よりも写真、写真よりも動画というような、時代の流れに合わせて訴求していかなければならない。
      地域で活動されている方々をつなぐ仕組みも大事であると考えており、学習支援事業に取り組んでいる方を対象としてフェイスブックに交流広場をつくった。ぜひご利用いただき、情報共有・交換をしていただきたい。
      崎田氏 皆さんの自らの学び合いから、地域での話し合いといった場につなげるときに、特に次世代の方々を巻き込んだ対話の場を広げていただければと思う。その際、皆で話し合いを行う動機づけ、場づくり、いかに皆さんに興味を持っていただけるような場をつくっていけるかが大事なポイントだと思う。
      そのような場をつくった後の情報提供に関しては、若い方々からは地域が将来どうなるのかということに関して情報がほしいと言われることが多いので、どのような情報を準備するのかということについてもエネ庁やNUMOにしっかり考えていただき、学び合いや対話の場を応援していただきたい。

  • 分科会に分かれての交流会
    • 分科会1
      •  活動事例紹介・意見交換「活動事例を共有する」
      •  内容:3団体の活動事例の紹介と小グループのワークショップ

      • (主な意見)
        • 自分事として考えてもらえるように「自分の町に処分場ができたらどうなるのか」等、未来をイメージしてもらうようなアプローチが大切だと思う。
        • NUMOの説明は常に慎重で下から話をしているように感じる。説明の仕方に信念が感じられない。それでは事業は進まないのではないか。
        • 意識して継続することでアンテナを持つことができる。真剣に取り組むことは、必ずしも真正面から取り組むだけではなく、アンテナを張ることでもある。
        • 単にSNSやチラシで情報発信するのではなく、対象に中身のある情報を伝える必要がある。

      分科会1の様子
    • 分科会2
      • 学生・教育関係者向け「誰がなぜゲーム」
      • 「『誰がなぜゲーム』で権利の所在と根拠を考える」
      • 講師:青木 俊明 東北大学大学院国際文化研究科 准教授
      • 内容:異なる立場や多様な意見を理解するための参加型講演会

      • 「誰がなぜゲーム」とは、参加者を地元住民、有識者、国民多数者、政府機関の4つの役割に分け、社会的決定の決定権は誰に与えられるのか(「誰が」)、その根拠は何なのか(「なぜ」)について議論を行う参加型のロールプレイングゲーム。

      • (参加者の感想)
        • 権利の考え方やそれぞれの立場によって変わる意見等を通して、結論づける難しさを実感した。
        • ゲーム内で他の方の意見を聞くことができ、自分の考えつかない点に気がついた。
        • いろいろな立場での見方を詳しい方たちと考えることによって、深く考えることの大切さを改めて確認できた。
        • 高校の授業の実践で使えるゲームだと思った。
        • 本当にいろいろな立場の方がいろいろな意見を想定され、自分の頭の中で考えられない話題になり良かった。

      分科会2の様子
    • 分科会3
      • 説明・意見交換「技術への信頼を醸成する伝え方とは?」
      • 内容:NUMO技術部による包括的技術報告書の説明と意見交換
        • 包括的技術報告書の内容(長期的な安全性が確保できること)をどのようにしたら一般の方に理解していただけるか
        • 地層処分の技術への信頼、理解を得るためにはどのように伝えたらよいか

      • (主な意見)
        • 地層処分を専門としない専門家等に包括的技術報告書を読んでもらい、「NUMO vs 専門家」と題した公開討論レビューを実施し、その様子をSNSで配信してはどうか。NUMOと専門家が意見を戦わせる様子を見せることで、一般の方の信頼につながる。
        • 安全を理解するよりも安心できることの方が重要。安心できる情報を科学的特性マップのように視覚的に示す等、具体的に示してほしい。
        • 分かりやすい指標との比較で示してほしい。10万年といった時間スケールは理解が困難であり、そこでつまづくとその後は全く理解してくれなくなる。
        • どんなに難しい内容でも興味があるところは読み込んでもらえるので、平易にまとめられると意味がない。
        • 付属書までを全国の図書館に寄贈してはどうか。一般の方々を対象とした平易な内容の資料と併せて地層処分コーナーをつくれば効果的。
        • 難しいモデル式を示すのではなく、技術的な研究で何をやっているかの全体像を伝えていくことが大事ではないか。

      分科会3の様子