Stay Home : 2020年のエネルギーの見通しと日本のリスク
1.Stay home!か、Stay at home!か
Stay home!
皆様、在宅要請が長く続いています。ご本人もご家族も、在宅を十二分に享受された頃ではないでしょうか。“Stay home!”、この言葉は、学校英語では、“Stay at home!”でしょうか。しかし、“Stay home”と言った方が間違いなく親しみを感じます。今回のパンデミック対策としては、“Stay home!”が依然、第一の対策のようです。
この間、色々と興味ある報道が続きました。エネルギーに関する二つの情報をご紹介します。
2.IEAが示すパンデミックによる世界のエネルギー(2020年の見通し)への影響
4月30日、国際エネルギー機関(IEA)は、"Covid-19危機による世 界エネルギー需要とCO2排出への影響"という報告を公表しました。2020年の第1四半期、そして、4月の初めまでの実績を踏まえたものです。
その報告の主要点を手短にご紹介します。
<2020年見通し、エネルギー全体▲6%、電気▲5%>
IEAのまとめた世界の2020年第一四半期(1~3月)の実績は、一次エネルギー:前年同期比・マイナス3.8%、電気の需要:同マイナス2.5%となっています。
2020年一年間を見通し、一次エネルギー:前年比マイナス6%、電力需要:同比マイナス5%としています。
<リーマンショックより厳しい今回…要因は中印>
IEAは、まず、今回のパンデミックによるエネルギー面への影響が、リーマンショックの世界的財政危機の際以上に大きいことを指摘しています。その違いについて、「2009年では、中国・インドがしっかりしていたので、先進国の下降を下支えしていた。しかし、今回:2020年のパンデミックでは、世界の全ての国が同じような影響を受けていて、世界全体が下降している。」と総括しています。
リーマンショックは、2008年9月にアメリカの大手投資銀行グループ:リーマン・ブラザースが破産した影響によって起こった世界的金融危機です。世界のエネルギー需要が減少したのは、翌2009年で、前年比で一次エネルギー:1.4%減少、電気エネルギー:0.8%の減少でした(BP統計)。
<石油が厳しい…自動車に加え航空機輸送が大幅減少>
前述したところですが、IEAは、2020年第1四半期の世界エネルギー需要動向を前年同期比:3.8%の減少だとしています。中でも、特に、石油需要は、前年同期比ほぼ5%の減少です。これは、人と物・双方の移動が世界中で大幅に減り、自動車はもちろん航空機の輸送量が世界全体で減少したことを映しています。第一四半期3か月で、車による輸送・50%、航空機輸送・60%という大幅な低下なのです。
<なるほどと受け止められる感染拡大見通し…先進国で第二波も>
IEAは、2020年のエネルギー見通しを考える際に、パンデミックについて次の通りの二つの要因を前提にしています。なるほどと思うところです。
- アフリカ、南米、その他の発展途上国では、パンデミックとその影響が先進諸国に比べ遅れて出てきている。
- また、この秋には、先進国でパンデミック第二派の影響が考えられる。 要は、世界全体でみると、パンデミックは、簡単には収まらないとみているのです。
3.コロナウイルスが明らかにした“日本のエネルギーの脆弱性”
5月6日の英国フィナンシアル・タイムス(FT)は、“隠されたリスク(Hidden Threat)…コロナウイルスが暴いた福島事故後の日本のエネルギーの脆弱性”と題する記事を掲載しました。日本が発電の40%、エネルギー全体の22%を頼っている液化天然ガス(LNG)の貯蔵が2週間分ほどしかないということを問題として指摘しているのです(注)。
首都圏に火力発電による電力を供給するJERAが、新型コロナウイルス感染拡大の中、LNG燃料と発電を確保するため色々な工夫をしている実情も紹介しています。さらに、厳しい状況にもかかわらず、日本では幾つかの原子力発電所が社会的事情によって運転をしていないということにも触れています。実は、この記事は、日経英文アジア版(The Nikkei Asian Review)が3月に伝えた記事を、FT本紙が改めて掲載したものです。世界的メデイアFTも、日本のエネルギー事情に興味を持ったようです。
(注)LNG:液化天然ガスは、日本の場合、オーストラリア、アブダビ、カタール、アメリカなどから輸入をしています。LNGは、天然ガスをマイナス162℃まで冷却し、専用ターミナルから積み出されます。専用の輸送船によって、日本に輸入されます。輸入受け入れは、貯蔵タンクや気化装置を備えた受け入れターミナルで行われます。タンクなどは、マイナス162℃の極低温に耐える素材で造られています。最近では、天然ガスの液化・気化を専用船上で行う技術も開発されています。