コラム「まっさんの窓」

Vol. 33 (2023/9/23)

猛暑…126年間で最高の暑さ

気象庁は、8月末に 異常気象分析専門会議 を開催しました。
そして、今年の夏の暑さについて、
「日本の平均気温は1898(明治31)年以降で夏として最も高くなりました。」
と言っています。
発表文を読むと、何とか "異常気象" という表現を使わないようにという気配りが感じられるようです。
 一方、ユーラシア大陸の西端に位置する英国でも、今年の夏はとても暑いようです。
 英国の公共放送BBCは
“なぜ今年の夏はこんなに暑いのか 世界各地で最高気温を記録”
という見出しで、暑さの原因を解説しています。(2023年7月18日BBCニュース)
 伝えられる暑さの原因はやはり地球温暖化です。
「温暖化をもたらす温室効果ガスの排出が増えるのを止めない限り温暖化は続かざるを得ないだろう」という英国の気象学者(英国エクセター大学気象科学者:リチャード・ベッツ教授)の言葉を紹介しています。

<荒々しくなってきている気象>

今年の夏は暑い!
それも、全国的に暑いようです。昔からこんなに暑かっただろうかと思わざるを得ません。熱中症で病院に運ばれる人も今年は例年に比べて一段と多いようです。
八月中旬に来た台風7号も鳥取地方で豪雨を降らせ、大きな被害をもたらしました。気象が荒々しくなって来ています。
自然災害による経済的損害額も相当な額に及んでいるに違いありません。
実は、気象や身の回りの自然がこうなることを予測していた人が二人います。


<世界各地に熱を運ぶ“海流”とその影響 >

1人は英国人で世界銀行のチーフ・エコノミストを務めたニコラス・スターン博士です。博士は日本にも来られて在日英国大使館で講演をされています。
BBCの解説の中で、改めて知らされたことがあります。
それは地球の表面を取り囲む温暖化ガスがもたらす熱のおよそ半分が海水を温めることに使われるという点です。
過日青森の下北半島へ出張をした際に耳にしたことを思い出しました。津軽海峡に面した大畑や太平洋側の八戸でイカが獲れなくなっていると聞きました。菜の花畑で良く知られる新横浜町は“ナマコ”が名産なのですが、“ナマコ”が不漁で漁を休んでいるということでした。
どうやら、温められた海水が“海流”として地球上の各地を巡って熱を運び各地に影響を及ぼしているようです。


<“化石燃料時代の終わりの始まり”…IEA事務局長>

一方、9月12日の英国有力経済紙フィナンシアル・タイムス(FT)は“化石燃料時代の終わりの始まり”とする国際エネルギー機関のファテイ・ビロール事務局長の衝撃的な言葉を掲載しました。このところの暑さがきっかけになっているに違いありません。
この意見は石炭・石油・天然ガスなどの利用に対して、大きなボールを直球でぶつけたようなショックのあるメッセージです。
間違いなくこの考えは各国のエネルギー選択にも影響を与えるだろうと思われます。
何といっても化石燃料の代替としては、省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力発電しか今のところないのですから。
日本もこれからのエネルギー選択において、改めてIEA事務局長の今回の発言を踏まえなおすことが求められるかもしれません。

<信頼回復が課題であり続ける日本>

現在、ヨーロッパでは気候変動対策として原子力発電が見直されている上に、ロシアのウクライナへの一方的な軍事侵攻の影響もあり、一部の国では原子力発電開発を進めようとしています。
日本では岸田政権が11年ぶりに原子力開発推進を打ち出しました。
原子力に追い風が吹き始めています。
しかし、日本では福島原子力発電の事故の影響がまだまだ残っており、原子力発電を進めるには、やはり一般の皆さんからの信頼回復が課題です。
何といっても、既存の原子力発電所を安全・確実に動かして、原子力発電の良いところを現実に示して、一般の方々の理解をいただくことではないでしょうか。
 

化石燃料等からのCO?排出量と大気中のCO?濃度の変化
 
理事長 桝本 晃章

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