コラム「まっさんの窓」

Vol. 30 (2023/5/31)

広島G7サミットの共同宣言~原子力発電は低廉な低炭素エネルギー~

2023年5月18日から20日までの3日間、広島でG7先進国サミットが開かれました。ウクライナのゼレンスキー大統領が飛び入りのようにして見えましたので、G7首脳会議が出した共同宣言にはあまり関心が集まりませんでした。共同宣言はとても広範囲に及ぶものです。ここではエネルギー、特に原子力発電に関する箇所を取り上げます。この部分は脱原発の二国(独伊)を除く米英仏加日の五か国で書いたということです。


<世界のエネルギー情勢は“エネルギー危機”>

まず、現在のエネルギー情勢をロシアのエネルギー供給を巡って、“エネルギー危機”だといっています。


<原子力発電は低廉な低炭素エネルギー>

そして、原子力発電を“化石燃料への依存を減らすことのできる低廉な低炭素エネルギー”としています。
宣言本文の原子力発電を書いた箇所は次のとおりです。
「化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、ベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。」


<小型モジュール炉にも触れる>

さらに、次のとおりに続いています。
「これらの諸国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの諸国はまた、国内及びパートナー国において、高度な安全システムを有する小型モジュール 炉及びその他の革新炉などの原子炉の開発及び建設の支援、核燃料を含む強固で強靭な原子力サプライチェーンの構築並びに原子力技術及び人材の維持・強化にコミットする。」


<ロシアへの依存低減で志を同じくするパートナー>

「これらの諸国は、ロシアへの依存を減らすため、志を同じくするパートナーと協働する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。」


<福島事故炉の処理水についても触れる…IAEAのレビューを支持>

また、事故を起こした福島第一原子力発電所の“処理水”にも触れています。
「我々は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展ととも、科学的根拠に基づき国際原子力機関(IAEA)とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去設備(ALPS)等で浄化処理した処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。」

冒頭に述べましたが、ウクライナ大統領への関心が極めて強く、残念なことに、G7広島宣言にはあまり関心が集まりませんでしたので、ここに短くご紹介する次第です。


<ヒンヅー教徒お二人とお好み焼>

終わりに、このサミットの余談を二つご紹介します。

1.ヒンヅー教徒のトップ二人
今回は、八か国の首脳がオブザーバーとして訪日されています。八か国とは、オーストラリア、インド、韓国、ベトナム、インドネシア、コモロ、ブラジル、クック諸島です。
この15人の首脳の内、英国・スナク首相とインド・モデイ首相のお二人はヒンヅー教徒です。キリスト教、イスラム教、仏教など世界的な宗教がある中で、ヒンヅー教信者のトップがお二人そろうという偶然には驚くところです。

2.広島風お好み焼き
ところで、広島は、“お好み焼き”で広く知られています。
それだけに、今回のG7サミットで見えた首脳のご婦人たちに、岸田総理婦人は広島風お好み焼きが振舞われたようです。
とても地域性が出ていて、嬉しいですね。

 
理事長 桝本 晃章
 
 

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