コラム「まっさんの窓」

Vol. 25 (2022/10/25)

“恐ろしい冬”…ロシア発
第三次エネルギー危機がヨーロッパを襲っている!

“EU各国は今後「5年から10年」「恐ろしい」冬を迎えることになる”
これは、英国BBCが伝えたベルギーのエネルギー大臣の言葉です。
“恐ろしい”という意味を解釈すれば、二つの意味があると思われます。それは、供給の懸念と価格の心配です。
ヨーロッパは、エネルギー源の24%、電気の19%を天然ガスに頼っています。その天然ガスの七割強がロシアからパイプラインで送られてくるガスです。
 

出典:原子力・エネルギー図面集


<冬は、ガス暖房の季節>

冬は、暖房の季節です。電気のエアコンもあるでしょうが、使われるのはもっぱらガス暖房です。勿論北方では、地域暖房もあります。それでも、やはり頼りは、“ガス”、それも、結果的に“ロシアのガス”というのが現状です。
前回の“窓”でも触れましたが、天然ガスは、ヨーロッパ全域に張り巡らされた“ガス・パイプライン”によって各国に送られています。 冬に備えて備蓄を増やしている国もあるようですが、それも限界があります。結局、天然ガス大供給国のロシアの影響は計り知れないほどに大きいと言わざるを得ません。


<ウクライナの人々を厳寒の中で生活させようとしているロシア>

長く続いているロシアのウクライナへの軍事侵攻を見ると、最近では、発電所を狙って攻撃しています。これは、寒い冬に欠かせない暖房のおおもとを破壊して、ウクライナの人々に“暖”を取らせず、厳寒の中で生活させようとしているのです。


<ガスの値段を左右するロシア>

もう一つの意味は値段です。天然ガス価格は、基本的にはガスの需給バランスによって決まります。ですから、大供給国:ロシアのガス価格に及ぼす影響は大きいものがあるわけです。
ロシアの天然ガスに大きく頼っている国々の中で、アメリカや中東の産ガス国からLNGとして、ガス供給を受けようとしている国もあります。しかし、LNGを受け取るには、ガス・ターミナルの建設・整備が必要です。その建設には、時間がかからざるを得ません。
エネルギーは世界的つながりを持つ商品ですから、その影響は日本にも及んでいます。日本でも輸入するLNGの値段が上がって、電気やガス料金が値上がりしています。幸い、日本の天然ガス(LNG)の多くは、長期契約をして、オーストラリアや中東カタールから輸入していますので、ロシアのガス供給の影響はヨーロッパほど大きくはありません。
 

出典:原子力・エネルギー図面集


<電気料金80%増!>

ところが、ユーラシア大陸の西側に位置する島国:英国の場合には、電気の四割を天然ガスに頼っています。直接ロシアからくるガスは、少ないのですが、ガス価格は世界市場の影響を受けますので、英国でも高騰しているようです。そのような状況を背景に、英国の規制当局は、実に80%の値上げを発表しました(8月末)。英国内の幾つかの団体は、“命にかかわる値上げだ!”、“人命が危険にさらされる恐れもある!”と警告しているようです。


<スエーデンでも倍増!>

また、スエーデンでも同様に、電気料金は高騰せざるを得ないようで、電力会社(バッテンフォール)の社長が、テレビ出演をした際に、この冬の電気料金が二倍になる可能性があると見通しを示したということです。
この冬が暖冬であることを願うばかりです。
 
理事長 桝本 晃章

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