Vol. 20 (2022/4/6)
原子力発電の活用も提案するIEAの10ポイント・プラン
IEA:国際エネルギー機関がEUに提案する
“ロシア産天然ガス依存低減のための10ポイント・プラン”
“ロシア産天然ガス依存低減のための10ポイント・プラン”
2022年2月24日、ロシアが隣国ウクライナに突然軍事侵攻を始めました。エネルギー資源大国ロシアのこの暴挙は、世界のエネルギー情勢に大きな影響を及ぼしています。
<日本にも影響…エネルギー価格が上昇>
影響は、日本にも及んでいます。石油価格が世界的に高くなりましたので、日本でもガソリンや灯油、さらに、ガス・電気などのエネルギーが値上がりしています。さらに、その波及で一般物価までが上昇しつつあります。
また、ロシアとウクライナは、小麦などの農産物の大生産国・輸出国だけに、食糧事情にもマイナスの影響が及び始めています。
<“ロシアからの天然ガス輸入量を減らすための、IEA/10 ポイント・プラン”>
ヨーロッパ諸国は、パイプラインでロシアから天然ガスを大量に輸入しています。石油や石炭もロシアに大きく頼っています。
出典:原子力・エネルギー問題集
そうした状況を踏まえて、国際エネルギー機関:IEAは3月3日、EU諸国に対してロシアからの天然ガス輸入量を減らそうという提言をしました。
「ロシアからの天然ガス依存低減のための10ポイント・プラン」です。
ヨーロッパは、輸入している天然ガスの51%、石油の50%、石炭の29%をロシアに頼っています(BP、2020年)。 ヨーロッパのエネルギー供給の構成は、石油:34%、天然ガス:25%、石炭:12%、原子力発電:10%、再生可能エネルギー12%ですから、ロシアの資源にどっぷりと頼っているわけです。
<ロシアは、エネルギーを経済・政治的武器にしている:IEA>
IEAは、「ロシアが天然ガスを経済・政治的な武器として使用している」(ファティ・ビロル事務局長)としていて、軍事侵攻を続けるロシアからの天然ガスや石油などへの依存を減らそうと対抗を呼び掛けています。
<既設原子力発電所の一層の活用でロシアからの天然ガス輸入量の8%を削減>
IEAの提案する10ポイント・プランは、ロシアからの天然ガス輸入を他国・他地域に切り替えようという案に始まり、風力や太陽光発電開発を加速しようなど、全部で10項目に及びます。原子力発電の活用も提言されています。
今ある原子力発電所の発電量を増やそうという提案です。
IEAは、バイオマス発電と原子力発電を増やすことで、130億m3の天然ガス消費を減らすことができるとしています。この量は、ヨーロッパ(EU)がロシアから輸入している天然ガスのおよそ8%に相当する大きなものです。
ちなみに、日本は、天然ガスに、エネルギー供給の22%、発電の35%を頼っていますが、ロシアからのガスは、天然ガスの総輸入量の8%ほどです。
出典:原子力・エネルギー問題集
理事長 桝本 晃章