月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2015年12月号 対談(抜粋)

世界の原子力開発を見る
― ロシア・中国・韓国が強力に原子力を建設 ―

1980年に全原発を2010年までに廃止するとしたスウェーデン。この方針は、昨年の総選挙で勝利した新政権によって再確認されました。 しかし現実としては、今でも10基の原発が動いて、電力の約4割を賄っています。
そのスウェーデンの出身で、世界原子力協会の専務理事であるアニエッタ・リーシングさんが来日されました。リーシング女史に世界の原子力の動向、放射線に対する考え方などのお話を伺いました。

世界原子力協会・専務理事
アニエッタ・リーシング  氏 (Agneta Rising)

1980年、Vattenfall ABに入社し、副社長を務めるなど、放射線防護を中心に原子力と環境に関する業務に従事。WiNの会長、欧州原子力学会の会長、スウェーデン原子力学会の会長等を歴任。スウェーデン政府を始めとして、IAEAおよび欧州委員会からの任命により、各機関で、20年間にわたって、原子力発電の見通しや安全に関するアドバイザーとしても活躍している。

(一社)日本動力協会・会長
桝本 晃章  氏 (ますもと・てるあき)

1938年神奈川県生まれ。62年東京電力(株)入社後、企画部広報課長、電気事業連合会広報部長、取締役広報部長、常務取締役、取締役副社長などを歴任。その後、電気事業連合会副会長を経て、2008年から現職。

 

桝本
これまで、いろいろなことをご経験になってこられましたが、最も印象に残っている出来事は……。

 

 

リーシング
いくつかございます。日本に関して言えば、1991年に東京や青森で、500名ほどの主婦の方とお会いしたことが大変印象深い出来事でした。私がキャリアを始めてまだ間もないときでしたし、妊娠もしていましたので印象に残っています。
それから原子力の技術的な面では、ウラン鉱山の評価やレビューをするなど、興味深い仕事もして来ました。
強調したいのは、今後、ますます原子力業界が将来にクリーンな電力を提供していくことが、極めて重要だということです。
世界原子力協会(WNA)は今年9月に、原子力業界として、2050年には電力の25%を原子力発電で賄うという目標を設定しました。そのためには、電源のバランス良い調和が必要になります。私が世界の原子力業界の新たな取り組みとして主張しているところです。
この目標達成に向けて、これからも活動を続けていきます。すでに多くの組織の方々も参加したいと言っていただいています。

 

 

桝本
私がリーシングさんに初めてお会いしたのは、確か一九八八年か八九年でした。
1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故から数年後、世界で原子力の反対運動や、「原子力はいやだ」という雰囲気が強くなりました。
ちょうどその頃、元動力炉・核燃料開発事業団副理事長だった植松邦彦さん(故人)が、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)の事務局長で、このままでは世界の原子力開発が社会の支持を失うと心配されていました。植松さんは、欧米、カナダ、日本の原子力広報を担当している責任者をパリに集められました。
そして、一般の方たちに原子力についての理解をより的確にしてもらうには、どうしたらよいかをテーマに、何回か意見交換する機会をつくってくれたのです。

 

 

リーシング
そうでしたね!

 

 

桝本
1991年には、科学技術庁(現文部科学省)がサポートしてくれて、世界の原子力に関係されている女性に集まっていただき、東京でフォーラムを開催しました。
フォーラム終了後、リーシングさんには青森まで行っていただき、原子力やエネルギーの話をしていただきました。
その後、WiN(Women in Nuclear)という原子力に関係する女性の会合の場を立ちあげられましたね。

 

 

リーシング
WiNは、原子力や放射線に関するさまざまな分野で、専門的に働く女性が集まった非営利団体です。
現在では、107か国から2万5000人がメンバーとなるほどの大きな組織として成長し、認知度も高くなって来ています。
つい最近、ウィーンで開催されたIAEA(国際原子力機関)の会合にもメンバーが参加しています。

 

 

桝本
日本にもWiN-Japanがありますね。
ところで、リーシングさんは、二十数年前は、スウェーデンのバッテンフォールという電力会社で仕事をされていました。そして、その後、副社長にまでなられました。

 

(一部 抜粋)




2015年12月号 目次

 

風のように鳥のように(第72回)
健康長寿をめざすには/岸本葉子(エッセイスト)

対談
世界の原子力開発を見る/アニエッタ・リーシング(世界原子力協会・専務理事)× 桝本晃章((一社)日本動力協会・会長)

まいどわかりづらいお噺ですが
ニュートリノの研究で物質や宇宙の謎にせまる

いま伝えておきたいこと(第48回)
2015年の決算/高嶋哲夫(作家)

おもろいでっせ!モノづくり(第36回)
社内会議に2年間でませんでした/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

客観的に冷静に(第38回)
寺田寅彦随想 その9/有馬朗人(武蔵学園長)

笑いは万薬の長(第17回)
12月1日は世界エイズデー/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)

交差点

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