原子力文化2023年2月号 インタビュー(抜粋)
放射線によるペットの診断と治療は
― まずかかりつけ獣医に相談して連絡を ―
コロナ禍で在宅時間が増えたことなどにより、ペットを飼う人が増加しているといいます。
一方、ペットフードの進化や医療の発達などでペットの寿命も伸び、がんなどになる犬猫も多くなっています。
ペットに関する医療はどこまで進んでいるのか。特に診断や治療に使われる放射線関係はどうなっているのか。
「獣医放射線学」に携わる研究者お二人に、その現状と将来を伺いました。
(右)大阪公立大学獣医学部准教授
野口 俊助 氏 (のぐち・しゅんすけ)
(左)大阪公立大学獣医学部特任臨床助教
和田 悠佑 氏 (わだ・ゆうすけ)
―― 「獣医放射線学」とは聞きなれない言葉ですが。
大阪公立大学獣医学部には、当初から二人の獣医放射線学の専門家がいます。一人は基礎で、私は臨床です。
私は腫瘍科で腫瘍の全般を診ています。その中の一つとして放射線治療があるという形ですね。
ちなみに獣医学部附属獣医臨床センターの診療科には、腫瘍科、軟部組織外科、神経・整形外科、眼科、循環器科、内科、大動物科、検査科、画像診断科、麻酔科、消化器科があります。それぞれが、連携して診断や治療を行なっています。
―― ペットの飼い主が、大学病院に動物を連れて来るのは、どこかの紹介という形ですか。
ここ獣医学部附属獣医臨床センターの入っている建物は五階建てですが、病院機能を有しているのは一階~三階のそれぞれの階のおよそ半分です。ほかは全部獣医学部の教育に使用され、学生がいたり、研究室があったりです。大学と病院が重なっていると考えてよろしいです。今、獣医学部の学生は一学年四五名で、六学年あります。
でも、一年生は堺市内にある中百舌鳥に本部のキャンパスがあって、一般教養はそちらで、二年生からりんくうキャンパスで授業を受けます。
―― 動物は体の大きいもの、小さいものがいます。放射線の当て方も違うのでしょうか。
そして、当てる放射線の線量も、基本的に体が大きくても小さくても一緒です。
当てる件数は、多いときは一日に一五、一六件です。平均すると五件~一〇件くらいですね。
―― 犬や猫も数が増え寿命も伸びています。寿命が伸びれば人間と同じで、がんなどの病気も増えてきた、と考えてよろしいですか。
ここ獣医学部附属獣医臨床センターはペットとしては犬猫専門なので、その他の爬虫類や鳥などは、お断りしています。
―― 放射線を当てるのが一日平均五件~一〇件というと、大きな数になります。
毎日、放射線を当てる場合は入院させているケースもあります。できたら通院でしてほしいですが……。
―― それはがん治療が主ですか。
ただ、歳を取っている犬猫は、コンピュータ断層撮影(CT)を撮ったら歯がだいぶ悪かったりするので、ついでに歯科処置をするようなことはあります。人間の歯医者さんのように、悪い歯を抜いたり歯石を取ったり……。
―― 今、個人病院の獣医さんも、CTを持っているところがあります。そこでCTを診て、こちらに紹介されることもありますか。
精密検査をしたり、あるいは一般の病院では手が出せないような腫瘍を治療したりします。外科手術は私ども腫瘍科で対応することもあるし、軟部組織外科という診療科で対応する場合もあります。
(一部 抜粋)
2023年2月号 目次
風のように鳥のように(第158回)
肥満の要素/岸本葉子(エッセイスト)
インタビュー
放射線によるペットの診断と治療は/野口俊助〈大阪公立大学獣医学部准教授〉、和田悠佑〈大阪公立大学獣医学部特任臨床助教〉
世界を見渡せば(第26回)
ディズニーCEO復活/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)
特別寄稿
沸騰水炉を動かそう/豊田有恒〈作家・島根県立大学名誉教授〉
中東万華鏡(第83回)
イランのおこげ/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)
おもろいでっせ!モノづくり(第122回)
素直な心を持ってええ出会いをしましょう/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)
ドイツでは、今(第56回)
ラスト・ジェネレーションはRAF?/川口マーン惠美(作家)
ベクレルの抽斗(第5回)
ブラタモリのコミュニケーション/岸田一隆(青山学院大学経済学部教授)
交差点