月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2022年8月号 インタビュー(抜粋)

原子力にも女性の力を

5月23日から26日まで、WiN(Women in Nuclear)と呼ばれる国際NGOの年次大会が開催されました。
どのような活動を行なっているのでしょうか。
今月はWiN-Japanの小林容子さんにお話を伺いました。(聞き手・桝本晃章)

WiN-Global Board/WiN-Japan 理事
小林 容子  氏 (こばやし・ようこ)

東京都出身。慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。専門は、AIを利用した最適化。メーカー、電力系エンジニアリング会社等で、原子力分野の設計・研究開発、リスクコミュニケーション等に従事。日本原子力学会フェロー。

(一財)日本原子力文化財団理事長
桝本 晃章  氏 (ますもと・てるあき)

神奈川県生まれ。1962年東京電力入社後、企画部広報課長、電気事業連合会広報部長、東京電力取締役広報部長、常務取締役、取締役副社長、電気事業連合会副会長などを歴任。2018年7月から現職。

 

桝本
まずWiN-Globalというのはどういった組織なのか、ご紹介ください。

 

 

小林
WiN-Globalは、原子力・放射線分野で働く女性の国際NGOです。本部はオーストリアのウィーンにあります。一九九三年に設立していますので、もう三〇年弱になります。現在は世界中で一四五の支部があります。支部というのは主に国ですが、一部地域や国際機関等もあります。会員は世界中で今三万五〇〇〇人ほどいます。専門家集団として原子力のあらゆる分野で存在を示すというのがミッションですので、それに向けて活動を行なっています。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が昨年開催されましたが、そこでも主導的にいろいろな宣言を提案するなどして、原子力のあらゆる分野で女性がリーダーとして活躍する、そういうことが目標になっています。

 

 

桝本
COPは、今や万を超える人たちが集まる場になっていますが、原子力の関連、特に女性の原子力・放射線の専門家がCOPにご参加になるのは大変意味があると思います。

 

 

小林
参加するだけではなくて、提案をしています。どういうことかと言いますと、気候変動に関して各国で意思決定をしますが、その意思決定の場に必ず女性を半数以上入れたい。女性は世の中に半分いますので、そういう重要な政策を決定する場面に女性がいなくてはいけない。

 

 

桝本
私もそれは非常に大事なことだと思いますね。
 さて、原子力と聞くと、すぐ原子力発電というイメージがあるわけですが、もうちょっと広げると、放射線利用、しかも最近は重粒子線など医療用の分野で相当前進、進歩があって、粒子線の治療施設だけでも日本に二五あるそうです。
 これは主にがんの治療で、非常に正確にがんに照射できるそうですね。

 

小林
WiN-Japanでは毎年一回テクニカルツアーと言いまして、いろいろな原子力や放射線関係の施設を見学しています。数年前に、量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所において、重粒子線がん治療装置(HIMAC)を見学しました。参加者からは、「放射線被ばくの影響を研究する『守りの研究』と放射線を医療にうまく利用する『攻めの研究』の両方において専門性の高い研究機関であり、その重要性を強く実感した」、「重粒子線がん治療装置の大きさに圧倒されたが、今後、装置の小型化・普及や保険適用の拡大が進めば、がん患者の治療中のQOL(生活の質)のさらなる向上が見込めると期待する」などの感想が寄せられました。
 テクニカルツアーとして最近見学した施設としては、中国電力島根原子力発電所があります。島根原子力発電所は、当時、一号機は廃止措置中、二号機と三号機(建設中)は規制基準適合性審査中でした。WiN-Japanの会員からは、実際に設備等を自身の目で見ることで発電所の安全性への取り組み等の知見を深めるとともに、3号機の見学では、同機が改良型沸騰水型炉(ABWR)であることから、最新の原子炉の知見を得ることができたという感想が寄せられました。

 

(一部 抜粋)





2022年7月号 目次

 

風のように鳥のように(第152回)
ゆるゆると脱マスク/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
原子力にも女性の力を/小林容子(WiN-Global Board/WiN-Japan 理事)×桝本晃章((一財)日本原子力文化財団理事長)

世界を見渡せば(第20回)
覆ったロー対ウェイド判決/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡放射線
ミカンやサクラを重イオンビームで品種改良

中東万華鏡(第76回)
覆面の預言者(1)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第116回)
縁に恵まれて、よき人にお会いできます/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第50回)
私の40年のドイツ史 -急激な変化が起きた時代- /川口マーン惠美(作家)

温新知故(第41回)
屋久杉に刻まれた太陽フレアの痕跡!/斉藤孝次 (科学ジャーナリスト)

交差点


 

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