月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2022年4月号 インタビュー(抜粋)

なぜラジエーションハウスを作ったのか
― 綿毛が飛ぶように正確な知識を広げたい ―

この4月「劇場版ラジエーションハウス」が公開されます。この作品は、診療放射線技師の画像診断という普段は病院の裏側で行なわれている見えない仕事に、焦点を当てています。漫画から始まり、テレビドラマも好評で第二弾まで制作されました。企画した五月女康作さんに、なぜ漫画化を考えたのか、を伺いました。 

福島県立医科大学保健科学部准教授
五月女 康作  氏 (さおとめ・こうさく)

茨城県出身。診療放射線技師 筑波メディカルセンター、筑波大学サイバニクス研究センター研究員、東京大学総合文化研究科特任研究員を経て、2021年4月から現職に。

―― 「ラジエーションハウス」というのは、聞き慣れない言葉ですが。

これは原作の横幕智裕先生が作ったタイトルです。
私が昔働いていた筑波メディカルセンターという病院に、横幕先生と作画をやっているモリタイシ先生のお二人を、よく連れて行きました。まずは、私たちが、どういう言葉遣いや動きをしているのか生の現場を見ていただきました。
そのときに横幕先生が、患者さん側から見えない裏側の部屋で、いろいろな職種の人たちが出入りしているのを見て、「なんか家族のようですね」、「家のようですね」と言ったのです。
私たちは居慣れた場所なので、そういった感覚であそこの空間を見たことがなかったのですが、「作家さんや漫画家さんは、やはり感性がほかの人と違うな。これを家のようだと表現するのはすごいな」と思いました。
漫画のタイトルを決める打合せのときに、横幕さんが「家のようですね」と言ったのを、みんなが何となく覚えていまして、「そういえば、家のようだと言っていましたね。じゃあ、ハウスというのはどうですか」ということになったのです。「ハウスに何を付けますか」となったら、「もう放射線、ラジエーションしかないでしょう」ということで、「ラジエーションハウス」というタイトルになりました。
私もインターネットで「ラジエーションハウス」と検索してみたのですが、そういう言葉は一切なくて、それが逆にいいなと思いまして、このタイトルになりました。

 

JAXAから一緒にやってほしいと依頼が来た

 

―― ある研究がきっかけになって、考え方が変わったそうですが。

茨城県つくば市という土地柄は、研究所が非常に多くて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も、筑波大学もあります。当時勤務していた筑波メディカルセンターは、その中心的なエリアにありました。
私はそこで、磁気共鳴画像診断(MRI)という装置を専門に仕事をしていましたが、ある研究に筑波大学からMRIを貸してほしいと依頼が来たのです。たまたまMRIのある病院に依頼が来ただけですが、そのときに私がお手伝いをしたのです。
私たちが日常的に使っているMRIの撮影にはいろいろな技術がありますが、そのときの依頼では、よくある一般的な技術を求めていました。ただ、それを研究用に使うということなので、精度を高めたり、再現性を高めたりして協力したら、それが論文になり、とても感謝されました。診療放射線技師という職業の技術の評価を十分にいただきました。
そのときの筑波大学の研究チームが、JAXAともつながりがありました。その後、JAXAから私に「一緒にやってほしい」と依頼が来ました。それが宇宙飛行士の向井千秋先生のチームです。

 

 

(一部 抜粋)





2022年4月号 目次

風のように鳥のように(第148回)
断捨離の助け/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
なぜラジエーションハウスを作ったのか/五月女康作(福島県立医科大学保健科学部准教授)

世界を見渡せば(第16回)
AUW148の奇跡/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡原子力
仏・新規の原子力発電所を14基建設へ

中東万華鏡(第73回)
薔薇水と蒸留/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第112回)
なかなか決まらぬ方がましなんでしょうねえ/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第46回)
聖職者の醜聞と慰安婦問題/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第37回)
新展開を模索する「津波考古学」研究/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点


 

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