月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2022年2月号 インタビュー(抜粋)

食べ残しにどのくらい水がかかっているか
― バーチャルウォーターからペットボトルまで ―

食べ残しに、どのくらいの水がかかっているかわかりますか――水ジャーナリストの橋本淳司さんは、子どもたちに、こう問いかけます。
食料生産に水が消費されていることから、最近の土砂災害のこと、飲料水のこと……水にかかわる話は、汲めども尽きることがありません。
折しも、水資源のひとつである積雪の時期に、水の物語を伺いました。

水ジャーナリスト
橋本 淳司  氏 (はしもと・じゅんじ)

群馬県生まれ。水ジャーナリストとして水問題やその解決方法をメディアで発信。Yahoo!ニュース個人「オーサーアワード2019」、東洋経済オンライン2021「ニューウェーブ賞」受賞。著書多数。アクアスフィア・水教育研究所代表として、学校での探究的・協働的な学び、自治体、企業の水に関する普及啓発活動を支援。武蔵野大学工学部客員教授。

―― まず、「水教育」について伺えれば。

小学校、中学校で「総合的な学習の時間」という授業が始まったのが2002年度です。
当初、学校側も試行錯誤する時期がありました。そのときに私の本を読んだある小学校の校長先生から、海外の水の問題などの話をしてほしいという依頼がありました。それが学校教育との関わりの最初です。
私はもともと水が好きというか、水辺の近くに生まれ育ったのです。

 

―― ご出身はどちらですか。

群馬県の館林市です。利根川と渡良瀬川に挟まれ、現在は日本遺産に認定されている沼々のあるところに住んでいましたから、子どものころから水辺が好きでした。物書きとして独立した後は、フランスのミネラルウォーターの採水地やカナディアンロッキーを、調べたりしました。その後バングラデシュで、初めて水インフラのない生活を見ました。
それまではおいしい水や健康にいい水、美しい水辺などに興味があったのですが、上下水道が整っている地域は、世界的には非常に少ないことに気づきました。バングラデシュで訪れた集落は井戸水を汲み上げていましたが、ヒ素汚染された水でした。それでも飲まざるを得ない。
それから、エチオピアで水汲みの調査をしました。水汲みに一緒に行くような暮らしを1か月しましたが、女性や子どもたちが半日近くを費やしていました。海外の水問題は深刻だな、と感じました。
 そういった話を学校ですると、水を自分事として伝えるのは難しいな、と感じました。子どもたちは「バングラデシュの子どもはヒ素汚染された水しかなくて、命を縮めていてかわいそうだ」、「エチオピアでは、毎日水汲みに行かなくてはならない。そのため、学校に行けない。かわいそうだ」といった感想でした。

 

―― そうなりますね。

何とか自分事として水のことを考えてもらえないかと思いました。水教育は座学ではなくて、今、学校教育でよく行なわれるようになった探究型という学習の方法で、地域の水のことを伝えられないだろうか、ということを大学で学んだり、JICA(国際協力機構)の仕事で、中国で節水リーダーの育成をしました。国内でも静岡県三島市の高校に、国際人を育てるため、高校1年生は地域の水問題を探求する、2年生は海外の水問題を探究する文科省の事業を2014年から5年間支援しました。
そういったノウハウが蓄積されてきたので、水という教材は地域社会や海外の問題を考える上で、非常にいい教材ではないかと、今展開しています。

 

(一部 抜粋)





2022年2月号 目次

風のように鳥のように(第146回)
朝のたんぱく質/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
食べ残しにどのくらい水がかかっているか/橋本淳司(水ジャーナリスト)

世界を見渡せば(第14回)
偽物と本物を隔てるあいまいな一線/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡放射線
小型モジュール炉は世界的潮流

中東万華鏡(第71回
海の老人とダヴァール・パー/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第110回)
少子高齢化を嘆くばかりやなく/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第44回)
新政権となった緑の党のジレンマ/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第35回)
複雑な現在をたずね歴史と未来を知る!/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点


 

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