月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2021年06月号 ルポ(抜粋)

ルポ 常磐線の旅……列車が走れば活気が戻ってくる

2011年3月、未曽有の被害をもたらした東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、福島県内のJR常磐線は鉄路が途切れた。
9年の歳月を経て常磐線のレールは再びつながった。
それから一年。被災地は震災から10年という節目を迎えた。
列車が走れば町にも活気が戻ってくる。
止まっていた時計の針がようやく動き始めた福島県沿岸部の浜通り地方は今、復興に向け、どのような歩みを進めているのか。
常磐線の列車で浜通りの被災地を訪ねた。 「編集部」

Jヴィレッジの前に新駅ができた

特急「ひたち」と普通電車を乗り継ぎ、東京駅から3時間弱。真新しいJヴィレッジ駅に降り立つと、青葉を吹きわたる爽やかな初夏の風が頬を撫でた。サッカー日本代表のキャンプなどが行なわれてきた「サッカーの聖地」の最寄り駅。ホームの真ん中には、FIFAワールドカップなどの優勝トロフィーのレプリカを飾ることができる台座があった。
「Jヴィレッジの目の前に新駅ができて、常磐線が全線で開通したことにより東京、仙台とつながりました。少しずつこの地域が前に進んでいることを発信していきながら、Jヴィレッジに多くの賑わいをうむことで、ふくしま復興のシンボルとしての使命を果たしていきたいと思います」
Jヴィレッジで企画・広報を担当する課長の明石重周さん(42)はそう言って、楢葉町と広野町にまたがる広大な敷地に配された天然芝のピッチを見つめた。
東電が整備し、県に寄贈。1997年に国内初のサッカーのナショナルトレーニングセンターとして開設された。天然芝八面、人工芝三面のほか、宿泊施設なども備える。東京五輪・パラリンピックでは、聖火リレーの出発地として復興を後押しする役割も担っている。
 「震災から一か月後に荷物を取りに戻ってきましたが、駐車場所として車を誘導された先が、天然芝のピッチでした。僕らにとってここは神聖な場所でしたので、大変ショックでした」

 

 

(一部 抜粋)





2021年6月号 目次

 

風のように鳥のように(第138回)
価格変動型の服/岸本葉子(エッセイスト)

ルポ
常磐線の旅……列車が走れば活気が戻ってくる

世界を見渡せば(第6回)
「実力も運のうち」/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

特別寄稿
UNSCEARの報告書より 福島第一原子力発電所事故から10年 放射線被ばくの影響は/越智小枝(東京慈恵会医科大学准教授)

中東万華鏡(第63回)
アラビア馬(一)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第102回)
これからは医療や脱炭素産業を大事に/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第36回)
ロックダウンと子供たち/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第27回)
水中に刻まれた歴史の実像を探る!/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点


 

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