原子力文化2020年7月号 インタビュー(抜粋)
武漢の都市封鎖が終わって
― 防疫や分析は現代医学、治療は中西医結合で ―
未だに予断を許せない新型コロナウイルスの感染ですが、ウイルス対策として、世界で最初の都市封鎖は 中国の武漢で、今年1月23日でした。そして4月20日には封鎖を解除しています。
この武漢では、どういう対応がとられていたのか。かつて流行ったSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓は生かせたのか。
中国に留学経験があり、中医師の資格を持つ鵜沼宏樹さんに伺いました。
鵜沼 宏樹 氏 (うぬま・ひろき)
1962年 鳥取県生まれ。83年、中国・北京中医学院(現・北京中医薬大学)に留学。89年、同学院卒業後、北京教授講学団伝統医学治●研究所勤務を経て90年に帰国。東京衛生学園専門学校卒業後、日本の鍼灸・指圧師資格取得。94年、再度中国留学し天津、瀋陽、北京にて研修後、帯津三敬病院中国室長などを経て、現在に至る。『らくらく10式 太極拳』『医療気功』『元気になれるとっておきのツボ治療』等の著書がある。
―― 先生は、何か新型コロナウイルスの対策をなさっていますか。
対策としては、緑茶をいつもより多く飲むこととショウガのスライス、つまり緑茶+ショウガですね。
ショウガやニンニクやネギは疫病対策として、中国の養生法、家庭療法では王道です。ニンニクを水から煮出したニンニク水を飲んだり、うがいしたりします。
今回、ニンニクのにおい成分を吸い込むと、アリシンという揮発性の成分が、新型コロナであろうが、SARSやMERSであろうが、コロナウイルスが細胞に入って複製、再生するときに必要な蛋白分解酵素を抑える、ということが発表されました。
中国の江南大学の湯魯宏という薬学博士が、養殖産業の抗生物質に代わるものを、中薬や食材で何かないかと探す過程で見つかったのがニンニクです。それがコロナウイルスにも効くのがわかりました。ただ湯教授は医療分野ではないので、今回いいチャンスだと、武漢の幾つかの居住区で試させたのです。そうしたら陽性者が一人も出ませんでした。
ニンニクをすりおろしたものを吸い込んで、におい成分を、肺などに充分行き渡るよう少しの間とどめてから、吐き出すことを薦めています。
ショウガについては河南省の例があります。河南省通許県の人民病院で、武漢の出稼ぎから帰ってきて発症した人を受け入れました。25人くらい受け入れて、院内感染も起こらずにみんな治って退院しました。ここのスタッフが予防として飲んでいたのが甘草乾姜湯という処方です。それに入っている生薬は甘草と乾姜の二種類だけです。乾姜は、ショウガを干したものです。
日本では甘草乾姜湯が簡単に手に入らないし、甘草自体、調和作用がメインで、それほど強力な薬でもないので、普段飲んでいるお茶に、生のショウガをスライスして入れたりしています。
―― ショウガもニンニクも武漢の対応策で、証明されたのですね。
武漢の都市封鎖のときは、いきなり始まり、みんな混乱して、公共の交通機関もみんなストップしてしまいましたから、家庭にあるもので対応しなくてはいけない。私の大学の同級生は中国、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカと世界中に散らばっていて、中には親族や友達が武漢にいるという者もいる。それで「こういう家庭療法を」と提案するわけです。古典やよく効くと言われる養生法などをアドバイスしていましたね。
ニンニクは伝統的に家庭療法や道家の療法として、飲むとか食べるものばかりでした。ところが今回、におい成分を吸い込みとどめるという方法が初めて提案されました。
北京中医学大学の教授に同級生がいるので、データバンクで調べてもらいましたら、江南大学の湯教授はニンニクに関しての論文がかなりあるし、「これは嘘じゃなさそうだ。やってみよう」と……。お金はかからないし毒ではない。問題は、どうやって安全簡単に防御できるかです。話半分だとしても、50%でも効けば儲けものという感覚です。
(一部 抜粋)
2020年7月号 目次
風のように鳥のように(第127回)
初めてのネット句会/岸本葉子(エッセイスト)
インタビュー
武漢の都市封鎖が終わって/鵜沼宏樹(統合針灸治療院 元気 院長)
特別寄稿
新型コロナから見えてきたエネルギーの未来/金田武司(株式会社ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役社長)
中東万華鏡(第52回)
中東の黒死病/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)
おもろいでっせ!モノづくり(第91回)
大阪は公共心あふれてるんやと思います/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)
ドイツでは、今(第25回)
尊厳死とは何か?/川口マーン惠美(作家)
温新知故(第16回)
キリストの「聖骸布」は中世の偽物?/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)
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