月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2020年6月号 インタビュー(抜粋)

免疫力を高めるためには
― 生活、食物、そしてお酒は…… ―

新型コロナウイルスの流行で、免疫が大事だ、ということがよく言われています。 ネットやテレビでは免疫力を高める食品などが多く紹介されています。 必要以上に怖がらず、正しく新型コロナに立ち向かうには、どのように毎日を過ごせばいいのでしょう。 感染症や免疫がご専門の藤田紘一郎さんにお話を伺いました。   

東京医科歯科大学名誉教授
公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長

藤田 紘一郎  氏 (ふじた・こういちろう)

1939年、中国・旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科(博士課程)修了。医学博士。東京医科歯科大学名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『水の健康学』(新潮社)、『笑うカイチュウ』(講談社文庫)、『免疫力を高める快腸生活』(中経の文庫)、『アレルギーの9割は腸で治る!』(だいわ文庫)、『腸で寿命を延ばす人、縮める人』(ワニブックスPLUS新書)、『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』(監訳、文響社)など著書多数。

―― まず「免疫を高めると新型コロナの対策になるのか」というお話を。

コロナウイルスはそんなに珍しいものではなくて、人に感染するコロナウイルスは、6種類あります。このうち4つは、私たちが秋から春にかけてかかる風邪の原因ウイルスです。風邪の10~15%が、その4種のコロナウイルスによるものです。
ほかに有名なのは2002年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)ですね。SARSもコロナウイルスです。それから2012年にサウジアラビアで流行したMERS(中東呼吸器症候群)もそうです。SARSはコウモリ、MWEAはヒトコブラクダの中にいたコロナウイルスによる感染症です。
ですから、ヒトに感染していなかったのですが、突然変異してヒトに感染するようになりました。
これらは、動物を身近に飼っていたりして、人に感染するようになったのです。中国では、動物と一緒に生活したり、あまり食べる習慣のない肉を食べたりして、感染が起こりやすいのです。
今回の新型コロナウイルスは、2019年の12月31日に、中国・湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者の集団感染が見つかりました。それであっという間に広がりました。

―― 新型コロナはどのような特徴がありますか。

特徴としては、今度の新型コロナは、かかっても発症しない人が多いという点です。
SARSやMERSはかかった人は必ず発症しましたが、今回の新型コロナ感染は、感染しても発症しないことが問題です。
新型コロナは、どのくらい危険なウイルスなのでしょうか。その際の一つの目安となるのは、致死率です。エボラ出血熱の致死率は50%前後、MERSは約34%、SARSは約10%。そして、今回の新型コロナは、中国のデータによると、致死率は2.9%です。ですから、SARSやMERSに比べて、それほど恐ろしい病気ではないと思います。
  今、アメリカの死亡者が一番多くて、5月13日の時点で7万9634人、イギリスが3万2692人、イタリアが3万911人、フランスが2万6948人、スペインが2万6920人死亡していますが、これまでのデータからいうと、こんなに死亡者が多いはずないのです。
やはり、初期対応や病院の施設の対応の差によって出たのでしょう。

 

 

(一部 抜粋)





2020年6月号 目次

 

風のように鳥のように(第126回)
コロナ太り/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
免疫力を高めるためには/藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授)

特別寄稿
共感と寛容を/北村行孝(科学ジャーナリスト)

中東万華鏡(第51回)
中東の黒死病/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 中東研究センター長・研究理事)

おもろいでっせ!モノづくり(第90回)
それぞれができることで社会を支えないといけません/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第24回)
コロナ禍の中で考えたこと/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第15回)
「暗黒の国王」の実像を照らし出す!/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点


 

ページの先頭へ戻る