月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2019年9月号 インタビュー(抜粋)

みんなの胃袋を満たしてきた福島県
― 無印のものを作り続けることに胸を張って ―

福島県産農産物、過去最多の輸出――。
今年四月の報道では、農産物の2018年度の輸出量が218トンで過去最高を更新したとしています。 特にコメやモモが好調とされていましたが、未だに福島県産の食品を輸入規制している国があることも事実です。
福島第一原子力発電所事故から約8年半。農産物のマーケティングや農産物の買い控え問題を研究されている東京農業大学准教授 半杭真一さんにお話を伺いました。

東京農業大学 准教授
半杭 真一  氏 (はんぐい・しんいち)

福島県南相馬市生まれ。帯広畜産大学大学院を修了、2002年から14年間、福島県職員として農業関係の研究と教育に従事。2016年から東京農業大学国際食料情報学部国際バイオビジネス学科准教授。専門は農産物のマーケティング。福島県産品の買い控え問題などに関する調査研究も行なっている。

―― 今年4月、昨年度の福島県の農産品の輸出が過去最高になったという報道がありました。実際に海外において福島県産品の「食」を巡る動向は事故後から変わってきているのですか。

直近でもさまざまな国で輸入を再開する動きがあるように、これまで輸入が止まっていた状況が再開されつつあります。
今、国産品は海外に目を向けないと、とてもやっていけません。農産物でも、産地が輸出にビジネスとしての商機を見出している中で、これまで福島県産品の輸出が止まっている間に何が起こったかというと、ほかの産地がどんどん輸出をしていたのです。ですから、現在は少し後ろに下げられたスタートラインから福島県は輸出を増やそうとしている段階だと思います。
大きなトレンドとして、福島県産を含めて、日本産の食品の引き合いが強いので、これからも輸出量は伸びていくだろうと考えています。

 

―― それは日本産の品質や味がよいと評価されているからですか。

量ではもちろん海外にかなわないので、品質ですね。日本産は高品質なものとして海外で認識され、買われていると思います。どの産地も高品質をうたっているので競争も激しくなります。

 

―― 福島県のホームページによると、福島県産品の輸入を規制している国は22、解除した国が32です。

現在、規制しているところも品目限定、例えばキノコや水産物のみ禁止というように限定付きで止めているところもありますから、今後、解除される国や品目が広がっていくことを期待したいですね。

 

―― 事故から8年半経過しますが、国内で福島県産品を忌避する傾向はまだありますか。

 

 

(一部 抜粋)





2019年9月号 目次

 

風のように鳥のように(第117回)
温度の問題/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
みんなの胃袋を満たしてきた福島県/半杭真一(東京農業大学 准教授)

追跡原子力
◇目に見えぬ放射線利用を忍者の里に追う
◇セミ時雨の中、みんなのくらしと放射線展が開催

中東万華鏡(第42回)
ミイラ取りがミイラになる(3)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第81回)
年を取ったからこそ見える風景もあります/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第15回)
CO2税は惑星を救う?/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第6回)
水月湖「年縞」が五万年の年代を較正/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点



 

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