月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2019年8月号 インタビュー(抜粋)

気象や防災情報を活用して命を守る
― 情報の意味を知っていますか? ―

7月の初め、九州地方を中心とした西日本が豪雨に見舞われました。鹿児島、宮崎両県では、記録的な雨量が観測され、熊本県を含む196万人に避難指示や勧告が出される事態になりました。
年々、気象災害は増えているのでしょうか。また、私たちが命を守るためにできることは何なのでしょうか。
気象災害に「備える」ことの重要性を提唱されている気象予報士の半井小絵さんにお話を伺いました。

気象予報士、女優
半井 小絵  氏 (なからい・さえ)

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。2001年に気象予報士の資格を取得し、02年からNHKの気象キャスターを9年間担当する。現在は気象や防災の講演、司会、コメンテーターなどの活動のほか、役者として舞台に出演している。特定非営利活動法人「火山防災推進機構」客員研究員。著書に『半井小絵のお天気彩時記』(文春文庫)など

―― 先月も九州地方で豪雨被害がありました。最近、日本各地で災害が増えたという印象がありますが、これは気候変動によるものと考えてよろしいですか。

結論から言うと、地球規模で気温が上がっているということから、気候変動が起こっているのは確かだと思います。
冷たい空気より暖かい空気のほうが空気中に多くの水蒸気を含みます。水蒸気は雨雲の素です。その雨雲の素の水蒸気、気象用語でよく言う「暖かく湿った空気」は、気温が高ければ高いほど増えます。その空気が上空に持ち上げられ冷やされると凝結して雲粒になり、さらにそれがくっつくと雨粒となりザーッと雨を降らせるのです。
風の集束や地形などによって空気が持ち上げられると上昇流が強化されるので雨雲も発達します。低気圧も上昇流です。

 

―― 7月初旬、気象庁の会見が頻繁に開かれ、注意を喚起していたような印象を持ちましたが。

気象庁の中の体制がだんだん整って、前もってお知らせしようということになったのでしょう。
昨年と比べて、今年がシビアな現象が増えたかというと、そんなに1、2年で変わるものではありません。近年、豪雨災害が毎年のように発生するために、早めにお知らせする体制が組まれて会見が開かれていると思われます。

 

―― 例えば、降水量は近年増えてきているのでしょうか。

気象庁のホームページに最新のものが載っていますから、ご覧いただきたいですが、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が、全国で観測された回数(年間)をまとめた年間観測回数のグラフがあります。
1975年からのグラフを見ると、2000年ちょっと前までは、年間20回以下の年がほとんどだったのが、2000年前後を境にして20回を超えている年が多くなっています。そのあたりで気候のステージが変わった可能性がある、と考えられます。

 

 

(一部 抜粋)




2019年8月号 目次

 

風のように鳥のように(第116回)
しのび寄る魔の手/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
気象や防災情報を活用して命を守る/半井小絵(気象予報士、女優)

追跡原子力
アメリカのイラン制裁と今後

中東万華鏡(第41回)
ミイラ取りがミイラになる(2)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第80回)
ホルムズ海峡という地名を久しぶりに聞きました/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第14回)
# MeToo 運動/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第5回)
年輪の「酸素」同位体比で年代決定/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点

ページの先頭へ戻る