月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2019年6月号 インタビュー(抜粋)

平成は「青春の喪失」の時代だった
― 〝象徴の翁と媼〟が日本人の教養・品格を高める ―

元号が令和と改元されて、1か月が経ちました。
宗教学者の山折先生は、平成30年間を振り返り、「青春の喪失」の時代だったと位置づけます。
そして、今こそ日本文化の中心である伝統的な翁の文化の復活を、と提唱しています。

宗教学者
山折 哲雄  氏 (やまおり・てつお)

1931年 アメリカ・サンフランシスコ生まれ。国際日本文化研究センター名誉教授。東北大学助教授、国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター教授、同所長などを歴任。『17歳からの死生観』『天皇の宮中祭祀と日本人』『近代日本人の宗教意識』など著書多数。最新刊は『激しく考え、やさしく語る 私の履歴書』

―― 先生は「日本の変革期というのは、13世紀の法然、親鸞、道元、日蓮が出た時代、明治維新の時代、それから今だ。今もかなり危機的状況にある、世界の中の日本としてどうやっていくかは大変な課題だ」と。

そうです。それは平成30年間をどう考えるかの問題で、やはり衰退の30年間だったでしょう。特に最近の状況はまさに「青春の喪失」だったと言えるでしょう。
人間の成長において青春とはどういう時代か、その特徴は何かという側面から、成長の時期におけるさまざまな要因を平成という時代の変化のなかに置き換えて考えると、すべての状況が衰退、衰弱、衰亡のきざしをみせていた、そのような30年間であったと思いますね。

 

―― それは全体的なことですね。

全体のことです。その結果としての経済、バブルが弾ける等々の問題が後で起こってくるわけです。
私は平成30年間を象徴するキーワードが3つないし4つあると思っています。
一つは「癒し」。「癒し」というのは、主体がどこにあるのかわからないような言葉です。病院に担ぎ込まれて「看護師さん、助けて」とナースコールを押す、それに似た行為を象徴する言葉が「癒し」でした。私は平成に入って「癒し」という言葉がはやり出したときに「『癒し』という言葉は〝卑しい〟言葉だ」と書きました。今でもそう思っています。それから「がんばらない」という言葉…。

 

 

(一部 抜粋)




2019年6月号 目次

 

風のように鳥のように(第114回)
「昔の人」になってきた?/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
平成は「青春の喪失」の時代だった/山折哲雄(宗教学者)

追跡原子力
東京五輪に向けてテロワージュふくしまを実現

中東万華鏡(第39回)
チューリップ/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第78回)
最古の歴史を誇る金剛組さんと紹介されました/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第12回)
ドイツの「エネルギー転換」と「交通転換」の危険な共通点/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第3回)
歴史の「断層」も観るX線CT技術/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点

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