原子力文化2019年4月号 インタビュー(抜粋)
気づいたら恐竜を好きになっていた
― 化石は過去の世界の唯一の証拠です ―
福島県いわき市でフタバスズキリュウの化石を発見――
1968年、当時高校生だった鈴木直さんは、中生代の大型爬虫類の化石を発見して大きな話題を呼びました。
しかし、その化石は国立科学博物館に収められたままでした。
それから38年、2006年の佐藤たまきさんたちの論文で、新属新種の首長竜化石であることが国際的に認められたのです。
佐藤さんに、恐竜が大好きな漫画家のヒサクニヒコさんと対談をお願いしました。
佐藤 たまき 氏 (さとう・たまき)
東京都生まれ。古生物学者。東京大学理学部地学科卒業後、米国シンシナティ大学大学院修士課程を経て、カナダのカルガリー大学大学院博士課程修了。カナダ・王立ティレル古生物学博物館、北海道大学、カナダ自然博物館、国立科学博物館での博士研究員を経て、2007年から現大学に。2016年「猿橋賞」受賞。著書に『フタバスズキリュウ―もうひとつの物語』などがある。
ヒサ クニヒコ 氏 (ひさ・くにひこ)
1944 年 東京都生まれ。72 年に『戦争 漫画太平洋戦史』で第18回文芸春秋漫画賞受賞。恐竜から玩具、野生動物など幅広い分野に精通。特に恐竜研究家としても有名で、全国の博物館等での講師としても忙しい。『ことばのゆらい図鑑』『恐竜研究室』『きょうりゅうペぺのぼうけん』シリーズ、『人類の歴史を作った船の本』など、著書多数。最新刊は『やぁ、失敬!』
今は恐竜も日本で見つかっています。以前は「サハリンで、昔はニッポノサウルスという名前がついたのが見つかりましたが、本土にはいません」と。フタバスズキリュウが見つかって、初めて恐竜時代の爬虫類のちゃんとした化石が発見されたと大騒ぎになって、国立科学博物館やいわきなどで全身の骨格模型が飾られているのに「残念ながら学名はまだついていません」という状況が続いていました。それに佐藤さんがフタバサウルス・スズキイ、と学名をつけてくださったので、またみんなびっくりしました。
ですから「研究しなければいけないものだ」という意識を持ちにくかったのかもしれません。学名をつけたり、そういう基礎的な研究がされなければいけないことが理解できているのは、研究に関わる一部の人間だけでしょう。
取りあえずつけられたフタバスズキリュウというニックネームが学名のように独り歩きして、あれは恐竜の仲間だ、全身骨格があるというので、学名の有無はあまり関心がなかったかもしれません。
でも、恐竜の化石が日本でも出始めて、日本でも恐竜に学名がついて記載されるようになってきたときに、改めてきちんとフタバサウルスという学名がつけられた。和名でもフタバスズキリュウが残された形で発表されたのは、すごくうれしかったです。フタバスズキリュウを、研究するようになったきっかけはなんですか。
(一部 抜粋)
2019年4月号 目次
風のように鳥のように(第112回)
睡眠時間、どれくらい?/岸本葉子(エッセイスト)
対談
気づいたら恐竜を好きになっていた/佐藤たまき(東京学芸大学教育学部准教授)×ヒサ クニヒコ(漫画家)
特別寄稿
事故8年後の福島第一原子力発電所/北村行孝(科学ジャーナリスト)
中東万華鏡(第37回)
日本にやってきた象/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)
おもろいでっせ!モノづくり(第76回)
白洲次郎のような生き方したいもんです/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)
ドイツでは、今(第10回)
シュレーダー前首相の因縁のガスパイプライン/川口マーン惠美(作家)
温新知故(第1回)
「卑弥呼の鏡」を放射光が解明? /斉藤孝次(科学ジャーナリスト)
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