月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2019年1月号 新春対談(抜粋)

福島にかかわる思い
― 福島のことをもっと知ろう ―

今年3月で震災から8年が経ちます。震災以降、福島県相馬市で、被災者と向き合われてきた越智小枝さん。いま、福島には、「学ばないといけない場所」があるといいます。それはどういうことなのでしょうか。当財団理事長の桝本晃章とご対談いただきました。

東京慈恵会医科大学・臨床検査医学講座講師
越智 小枝  氏 (おち・さえ)

神奈川県生まれ。東京医科歯科大学医学部医学科卒業後、都内で膠原病内科の診療医として約10年勤務後、2011年イギリス・インペリアルカレッジロンドン公衆衛生大学院に留学。世界保健機関(WHO)、イングランド公衆衛生庁のインターンを経て、13年に福島県相馬市に移住。相馬中央病院内科診療科長を経て現職。剣道6段

(一財)日本原子力文化財団・理事長
桝本 晃章  氏 (ますもと・てるあき)

1938年 神奈川県生まれ。62年東京電力入社後、企画部広報課長、電気事業連合会広報部長、東京電力取締役広報部長、常務取締役、取締役副社長、電気事業連合会副会長などを歴任。2018年7月から現職。(一社)日本動力協会会長なども務めている。

 

桝本
なぜ医学の道に進まれたのですか。

 

 

越智
高校二年生の時、スティーヴン・ホーキング博士が話題になっていましたし、天文部だったので宇宙物理や、植物学にも興味がありました。
しかし会社員になって、何か図抜けた能力があるわけでもないのだったら、人の役に立つには資格を持っていたほうがいいと思ったのがきっかけです。

 

 

桝本
医学といっても分野の範囲が非常に広い。今のご専門をお選びになった理由は……。

 

 

越智
基本はリウマチの患者を診る内科です。リウマチはけっこう治療に時間がかかる病気で、普通にお薬を出すという治療以外に、患者さんと話すことで改善することも多いのです。病院に来たら痛みが楽になったと言う人もいるくらいです。工夫次第で安心した患者さんが少し楽になるところがいいと思いました。
リウマチは、人口の1%くらいがかかると言われている患者さんのかなり多い病気です。ここ20年で新しい薬がどんどんできて、まだ金額が高いのは問題ですが、薬で治療さえすればほぼ治る、抑え込めるところまできています。昔のように寝たきりになってしまう方は少ないと思います。

 

 

桝本
新薬が高額なのは、今後の医療の難しくて重大な問題ですね。

 

 

越智
新薬に値段をかけるだけの価値があるかといったら、絶対にあって、お金を払うことで日常生活を送れます。
リウマチになるのは女性が多く、家事労働を金銭に換算するような社会研究をされている方によると、主婦のフルタイムの価値は年間1500万円というのです。そういう価値に比べれば、月数万円という薬の値段は決して高くない、という言い方もできるのですが……。

 

(一部 抜粋)




2019年1月号 目次

 

風のように鳥のように(第109回)
買いおきをする派、しない派/岸本葉子(エッセイスト)

新春対談
福島にかかわる思い/越智小枝(東京慈恵会医科大学・臨床検査医学講座講師)×桝本晃章(一般財団法人 日本原子力文化財団・理事長)

著者インタビュー
日本人は「がん」を天災と考えている/中川恵一(東京大学医学部附属病院・ 放射線科准教授)

中東万華鏡(第34回)
ザクロの話/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第73回)
観てくれましたか?「リアル下町ロケット」/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第7回)
老後のリスクマネジメント、エネルギーのリスクマネジメント/川口マーン惠美(作家)

笑いは万薬の長(第54回)
本を読め/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)

交差点

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