原子力文化2018年12月号 インタビュー(抜粋)
足元と未来を見据える想像力を
― 暮らしの根っこに環境への思いを持とう ―
師走と言えば、1年溜まったホコリを払う大掃除―と思いますが、年末にまとめてやる必要はない、と生活研究家の阿部絢子さんはおっしゃいます。心地よく暮らすために、「科学的に家事をする」ことを提唱する阿部さんに、日々の暮らしを快適にするアイディアとコツ、私たちの暮らしと環境についてお話を伺いました。
阿部 絢子 氏 (あべ・あやこ)
新潟県生まれ。共立薬科大学卒業。薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカー勤務後、消費生活アドバイザーの資格を取得。家事全般や食品の安全性の専門家として、幅広く活躍している。また、世界各国の家庭にホームステイをしたり、禅寺に修行するなどし、これからの低炭素暮らしの追求に努めている。『ひとりサイズで、気ままに暮らす』『モノ・人・お金 自分整理のすすめ』『かしこく暮らす100の知恵』『阿部絢子のひとりでもハッピーに生きる技術』など著書多数。
―― 今年も残すところ1か月となりました。1年溜まったホコリを払う大掃除の季節ですね。
私はお掃除は年末にまとめてやることはないと思っています。
そもそも「大掃除」を暮れにやっていたのは農耕儀礼の一つです。祭儀と一緒なので、12月13日から新年迎え、要するに神迎えが始まる、という考え方です。それが色濃く日本では残っているだけなので、私はそれはあまり重視しません。
現代的にやったほうがいいと思うし、私は掃除は自分の「始末」という考え方をしています。日々溜まるホコリと油汚れと水垢、それらの始末ですから、それをどうすればいいか、もう少し科学的に考えないと、ということを皆さんにアドバイスしています。
「時期になったからこれをやらなきゃ」というのは、どうなのでしょう。冬に汚れを落とすといっても、1年溜めた汚れは落とすのが大変ですよね。
できる始末はその日のうちに、というほうが結果的に楽なのです。
―― 「できる始末はその日のうちに」ということですが、具体的に毎日どういう掃除をされているのですか。
実は毎日、掃除をしているわけではありません。例えば、ホコリの原因は何だと思いますか?
―― 服の繊維ですか。
服だけではありません。布団やカーテンなどもホコリの原因になります。
私の家にはカーテンがありません。うちはそういうホコリが発生するものを、みんな外しているのです。カーテンもそうだし、ふとんの中綿も全て替えて長繊維のポリエステルにしているし、毛布は羽毛をやめてアクリルにしています。
まずはホコリが嫌なら、その原因は何か、「そういうことを考えて下さい」と皆さんに言っています。原因を考えないで「家事は大変」と言うのは間違っていると思いませんか?
ホコリの原因は何か、そこを考えて、私は一か所でしか脱ぎ着しません。家の中では洗面所だけで脱ぎ着するよう徹底しています。帰宅時も、着替えの時も必ずです。そこでしかホコリは落ちませんから、結果的に掃除すべき場所も少なくなるのです。
だからと言って他の部屋全てにホコリがないわけではありませんが、掃除機は2か月に1回くらいしかかけなくても問題ないぐらいです。
ただし、水は水垢になるので、いつもすぐに拭いています。
とにかく水を使ったらすぐ拭く。お風呂のシャワーはスピーディーに浴びて、その後すぐに拭いておく。トイレもすぐブラッシングします。
(一部 抜粋)
2018年12月号 目次
風のように鳥のように(第108回)
爪切りがこわれて/岸本葉子(エッセイスト)
インタビュー
足元と未来を見据える想像力を/阿部絢子(生活研究家)
追跡原子力
なぜイギリスは原子力開発に取り組むのか
中東万華鏡(第33回)
日本にやってきたイスラーム教徒/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)
おもろいでっせ!モノづくり(第72回)
マゼンタの多い会場で講演したいもんです/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)
ドイツでは、今(第6回)
神様の国で巨木を見ながら電気のことを考える/川口マーン惠美(作家)
笑いは万薬の長(第53回)
低線量放射線とストレス、どちらががんリスクを上げるか/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)
交差点