月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2018年4月号 インタビュー(抜粋)

鍼や灸をWHOは認知する
― 中国では西洋医学と中医学は共存 ―

100年以上、西洋医学一辺倒だった世界の医療基準に転換点――。
日本や中国の伝統医療が世界保健機関(WHO)で今春認定、という記事が、新春の新聞で報道されました。
鍼や灸、薬草を使う伝統的な医療が、いわば公式に認知されるというのです。
明治以来、西洋医学一辺倒だった日本の医療に対して、伝統医療も重んじてきた中国の事情に詳しい中医師の鵜沼さんに、中国の現状などについてお話し願いました。

統合針灸治療院元気院長
鵜沼 宏樹  氏 (うぬま・ひろき)

1962年 鳥取県生まれ。83年、中国・北京中医学院(現・北京中医薬大学)に留学。89年、同学院卒業後、北京教授講学団伝統医学治たん研究所勤務を経て90年に帰国。東京衛生学園専門学校卒業後、日本の鍼灸・指圧師資格取得。94年、再度中国留学し天津、瀋陽、北京にて研修後、帯津三敬病院中国室長などを経て、現在に。『らくらく10式 太極拳』『医療気功』『元気になれるとっておきのツボ療法』等の著書がある。

―― 中医師とはどういう資格ですか。

中医師は中国では医者の資格で、私の場合は中医学学士です。母校は今、北京中医薬大学となっていますが、当時は北京中医学院という学校で、中国医学の大学では最高学府でした。
当時は外国人を受け入れる中国医学の大学は、広州中医学院か北京中医学院だけでした。

 

―― 中国には西洋医学もありますね。

それが主流です。その当時、西洋医学は、国家予算も中国医学の10倍、大学の数も3倍でした。ただ、中医学も祖国の医学だと大事にしているということです。
そもそも中国共産党が国を始めたときは貧しかった。ほとんどの人口が僻地、辺境の貧しい農村に分布していて、高価な西洋医学の医療など展開できませんでした。しかも、共産党を率いる毛沢東は西洋医学ではなく、中国医学の人たちに助けられてゲリラ活動を戦ってきたのです。
一方、対立する国民党の蒋介石は、西洋医学を唯一の医学とし、伝統医学を否定していました。彼は日本に留学した影響なのか、「中国医学を排除する」と打ち出した。それで伝統医学の人たちは毛沢東を応援したんです。
そういう経緯があって、毛沢東の時代から中国医学と西洋医学は同等でした。貧しいし、設備はないところからスタートして、「中西医結合」だったのです。
国際的には、TCM(Traditional Chinese Medicine)と言い、伝統中国医学となるのですが、中国では中医学と言います。「中国医学と西洋医学を合わせてやりましょう」というのが中西医結合です。

 

(一部 抜粋)




2018年4月号 目次

 

風のように鳥のように(第100回)
靴の匂い、どうしている?/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
鍼や灸をWHOは認知する/鵜沼宏樹(統合針灸治療院元気院長)

特別寄稿
2年ぶりに福島第一原子力発電所を訪ねて

中東万華鏡(第25回)
雨降らしの石(1)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第64回)
そだねージャパンよかったですなあ/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

地下環境学への誘い(第4回)
地下環境の働き/吉田英一(名古屋大学博物館教授〈環境地質学〉同大学院環境学研究科教授兼任)

笑いは万薬の長(第45回)
大桑原つつじ園/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)

交差点

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