原子力文化2018年3月号 インタビュー(抜粋)
オノマトペを使ってものづくりを
― 認知症早期発見からAIまで ―
南国で太陽がサンサンと降り注ぎ、北国ではまだ雪がシンシンと降る。
春は日本列島のあちこちで、擬音語や擬態語(オノマトペ)を使った季節の言葉にあふれます。
そんなオノマトペを医療から化粧品、人工知能(AI)までさまざまな分野のものづくりに役立てたい、という方がいらっしゃいます。
電気通信大学教授の坂本真樹さんにお話を伺いました。
坂本 真樹 氏 (さかもと・まき)
北海道生まれ。専門は人工知能学、認知科学、感性工学、感性コミュニケーション。東京外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、東京大学大学院総合文化研究科で言語情報科学を専攻し、博士号取得。電気通信大学電気通信学部准教授などを経て、同大学大学院情報理工学研究科教授、2016年から人工知能先端研究センター教授を兼務。『女度を上げるオノマトペの法則』『どうする?人工知能時代の就職活動』などの著書がある。
―― 私たちは生活のどんな場面でオノマトペを使っているのでしょうか。
皆さん、ほぼ毎日オノマトペを使ってお話されているのではないでしょうか。特に女性はオノマトペを一日に何回も使っていると思います。男性も「私はオノマトペなんて、そんな赤ちゃん言葉みたいな言葉は使いません」と言う方がいらっしゃいますが、病院に行くと「のどがヒリヒリする」「頭がズキズキする」「お腹がキリキリ痛くて」と必ずオノマトペを使ってお話されています。
男性でも「ああ、さっぱりした」「すっきりした」「夏だからちょっとベタつきますね」などと言いますよね。「すっきり」「さっぱり」「ベタつく」、などもオノマトペですね。
―― 日本語には、多いのですか。
日本語は擬態語の用法が多い、と言われています。
オノマトペは擬音語と擬態語をひっくるめた言葉とされることが多いのですが、例えば「チクタク」など音を言語音で模倣する擬音語タイプのものは、英語などの欧米言語を含む世界中の言語に多いです。「さらさら」「かさかさ」など手触りを表したり、「キラキラしてきれい」などの見た目など、音以外の感覚を表現するのに言語音を使って表現する擬態語の用法は、アジア、アフリカの言語に多いとされています。
日本語に特に多い印象をお持ちかもしれませんが、韓国語の方がもっと多いです。日本語より1000~2000くらい多いとも言われています。
ところが、使っている本人は実感がありません。私の研究室に韓国人の研究員がいるのですが、オノマトペの質感の研究に携わったときに、「韓国語はオノマトペがないから、僕はわかりません」と言うので、「韓国語は日本語よりオノマトペが多いのよ」と言ったら、驚いていました。
オノマトペは言語によって違いますが、最初の音、例えば「ふわふわ」の「ふ」の音に限定すると、わりと共通性があると言われています。英語では日本語の「ふわふわ」に相当するものは「フラッフィ」、「かりかり」は「クリスピー」で、最初の音に着目すると、普遍性があります。
(一部 抜粋)
2018年3月号 目次
風のように鳥のように(第99回)
絶食の四日間/岸本葉子(エッセイスト)
インタビュー
オノマトペを使ってものづくりを/坂本真樹(電気通信大学 情報理工学研究科/人工知能先端研究センター 教授)
追跡原子力
生きた教材として大きく貢献
中東万華鏡(第24回)
割礼と暦/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)
おもろいでっせ!モノづくり(第63回)
安うておいしうて健康にええ大阪どうです/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)
地下環境学への誘い(第3回)
地層処分と考古学/吉田英一(名古屋大学博物館教授〈環境地質学〉同大学院環境学研究科教授兼任)
笑いは万薬の長(第44回)
相馬、南相馬の診療から見える、福島原発事故の健康被害の本体/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)
交差点