月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2017年8月号 インタビュー(抜粋)

隣の国で何が起こっているのか
― 韓国は鏡に映っている像と思うとちょうどいい ―

韓国の文在寅新大統領は、経済政策では、財閥を改革するという公約を打ち出して話題を呼んでいます。またエネルギー政策としては「老朽化した火力を廃止して古い原子力発電の延長はさせず、新規建設も見直す」と言っています。そして「40年以内に原子力を廃止して再生エネルギーへ」、とも……。そんな現状を踏まえながら、1970年代から50回以上の渡韓経験を持つ作家の豊田有恒さんに、これからの韓国と日本についてお話し願いました。

作家
豊田 有恒  氏 (とよた・ありつね)

1938年 群馬県生まれ。島根県立大学名誉教授。62年SF作家として文壇にデビュー後、手塚治虫の虫プロで「鉄腕アトム」などのシナリオを手掛けた。歴史学・考古学から韓国・北朝鮮、エネルギー問題まで幅広い分野で執筆活動を続けている。『韓国は、いつから卑しい国になったのか』『どの面下げての韓国人』『どうする東アジア 聖徳太子に学ぶ外交』など著書多数。

―― まず文在寅(ムンジェイン)さんについて。

文在寅新大統領は、一応日本に関して言及しています。また首相の特使として自民党幹事長が行かれたときも、会っています。
これに対して、朴槿恵(パククネ)前大統領は日本を完全に忌避していました。親書の受け取りも拒否したりしていました。
日本人は、朴槿恵さんはお父さんの縁があるものですから、親日のような感じで、文在寅さんは反日のように色分けしていましたが、逆で、呉善花(オソンファ)(拓殖大学教授)さんに言わせると、お父さんの朴正煕(パクチョンヒ)大統領が娘に反日教育をずいぶんしていたらしいです。
お父さんは、日本に非常に強固な人脈をもち、日本の保守陣営は大変シンパシーをもっていたのですが、日本と仲良くして援助を取り付けて経済建設に向ける、ということを確立しました。

 

―― 一方で、韓国を反日でまとめたのもお父さんですね。

その反日は建前のような部分があります。あの国の人は主義主張で動きますから、どうしても建前と本音を一致させておかないと気が済まないようなところがあって、主義主張をなかなか動かせない。ですから、反日を言いさえすれば大体国民がまとまる。
国民性として韓国人が2人そろうと3つ党派ができる、とよく言います。つまり、意見がバラついていることが非常に多く、まとまりが悪い。何か一つのスローガン、求心力を求めないとなかなかまとまらないのです。
そして政権が変わると必ず全取り替えになり、前政権との持続性がなくなってしまいます。窓口だった人がいなくなる。今までずっとそうです。日本は逆で、本当は違うことをやりたいと思っても、前首相が築いた路線を踏襲する、と言います。そう言わないと角が立つ。
韓国は違うことを言わないと新鮮味がないのです。そういう意味で、文在寅さんの選挙公約を深刻に受け止める必要がないのでは、という見方をしています。
ただ問題は任鐘皙(イムジョンソック)という秘書室長です。韓国では秘書室長は非常に権力が強いのです。前政権で起きたセウォル号沈没事件のとき、朴大統領の空白の7時間に、「秘書室長と密会していたのではないか」と朝鮮日報に載っていた記事を引用しただけで産経新聞の加藤記者は捕まってしまった。それだけ秘書室長は権威があるのです。任鐘皙は、70年代、80年代頃の学生運動の首謀者で、何度も逮捕されていますし、北朝鮮にも何度か渡って、北朝鮮の人脈があります。
ですから、この人の影響力が大統領にどの程度あるかで今後が決まってきます。

 

(一部 抜粋)




2017年8月号 目次

 

風のように鳥のように(第92回)
手放す心得/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
隣の国で何が起こっているのか/豊田有恒(作家)

追跡原子力
「あらせ」は一秒間に数千個の電子を測定する

中東万華鏡(第17回)
ゲルギーアーンのこと/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第56回)
日本におったらわからないことが見えました/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

客観的に冷静に(第57回)
寺田寅彦随想 その28/有馬朗人(武蔵学園長)

笑いは万薬の長(第37回)
これからの放射線・健康教育:包括的ケアの必要性/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)

交差点

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